最新記事

子供

原因不明の小児性急性肝炎が急増、日本でも1例目確認

Hepatitis Outbreak Sees 17 Children Needing Liver Transplants, 1 Dying: WHO

2022年4月26日(火)14時58分
ファトマ・ハレド

子供たちの肝臓に何が起こったのか Tharakorn-iStock.

<世界で報告された169人のうち1人が死亡、17人は肝移植を必要とする重い症状に。新型コロナウイルスとの関連や新型アデノウイルスの出現など原因を調査中>

WHO(世界保健機関)は4月23日、複数の国で原因不明の子どもの急性肝炎の症例が相次いでいると発表した。

21日までに、12カ国で少なくとも169人の子ども(生後1カ月から16歳まで)がこの肝炎になったとの報告があり、1人が死亡した。17人は肝移植が必要な重篤な状態になだという。

WHOは声明の中で、「肝炎の症例が実際に増えているのか、注目され始めたために通常なら気づかないケースも見つかるようになったのかは、まだはっきりしない。原因となる病原体については、アデノウイルスだという説もあるが、まだ調査中だ」と述べた。

発表によれば、21日までにイギリスでは114例、アメリカでは9例が報告されている。このほかスペイン、イスラエル、デンマーク、アイルランド、オランダ、イタリア、ノルウェー、フランス、ルーマニアとベルギーでも症例報告がある(編集部注:日本でも25日、これら同じとみられる症例が1例見つかったと、厚生労働省が発表した)。

またWHOは声明の中で、これまでの報告例について「臨床症状としては急性肝炎で、肝障害の程度を表す肝酵素の数値の著しい上昇を伴う」と説明しており、このほかに腹痛や下痢、嘔吐などの症状も報告されているとつけ加えた。発熱を伴う症例はあまり報告されていない。

CDCも全米の医療機関に注意勧告

さらに声明は、こう続けた。「これらの報告例では、ウイルス性の急性肝炎の原因となる一般的なウイルス(A~E型の肝炎ウイルス)は検出されていない。現在入手可能な情報からは、海外への渡航や他の国々とのつながりが原因とは特定されていない」

米疾病対策センター(CDC)は21日、全米の医療機関や公衆衛生当局に対して、原因不明の子どもの肝障害に注意するよう勧告を出した。アラバマ州の小児病院で、複数の子どもの急性肝炎が確認されたことを受けた措置だ。いずれの子どもも、アデノウイルスの検査で陽性反応が出たという。

CDCはウェブサイト上に公表した声明の中で、次のように述べた。「2021年11月に、複数の臨床医からCDCに対して、5人の子どもが重篤な肝障害を患っていると報告があった。このうち3人は急性肝不全で、アデノウイルスの検査でも陽性反応が出た」

肝炎についてCDCは、肝臓に炎症が起きる疾患であり、原因としてはウイルスへの感染や飲酒、毒物、薬物や内科的な疾患などが考えられるとしている。しかしアラバマの症例については、原因が分かっていない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中