「蜜月」なき船出 再選されたマクロンに立ちはだかる課題
フランスのマクロン大統領(写真)は大統領選決選投票で極右候補のマリーヌ・ルペン氏を退け、再選を確実にした。パリで開かれた勝利集会で撮影(2022年 ロイター/Benoit Tessier)
フランスのマクロン大統領は24日に投開票された大統領選決選投票で極右候補のマリーヌ・ルペン氏を退け、再選を確実にした。しかし国内では政治的な対立や社会不満が高まっており、2期目の道のりは1期目よりもかなり厳しいものになりそうだ。
24日にエッフェル塔近くで開かれた集会でマクロン氏の支持者らは、苦労して勝ち取った再選の味をかみしめた。しかし当のマクロン氏は勝利演説で、多くの国民が自分に投票したのはルペン氏の当選を阻止するためで、自分の主張が支持されたからではないと認めた。
ブリジット夫人を伴って演説したマクロン氏は「誰も取り残さない。2期目の使命は1期目とは異なる。より良い5年間のために、共に新しいやり方を作り出していく」と訴えた。
わずか数週間後に次のハードルが控えている。マクロン氏は過去に例のない大幅な福祉制度の改革を目指しているが、その成否は6月の議会選でどのような政権が成立するかにかかっている。
通常、大統領選直後に行われる議会選挙は、敗北した候補者の支持者の投票率が低くなり、新しく選出された大統領が議会で過半数の勢力を獲得すると見込むことができる。
しかしルペン氏は敗北を認める演説で、議会で強力な野党ブロックを作ると言明し、対立姿勢を鮮明にした。一方、極左のジャン・リュック・メランション氏は第1回投票で左派票の大半を獲得し、首相就任を視野に入れている。
メランション氏は余勢を駆って議会で過半数を制し、大統領に党派が異なる首相と共存する「コアビタシオン」を強いることを目指している。
マクロン氏の勢力が過半数を獲得するか、もしくは実行可能な連立協定を結んだとしても、同氏は改革計画、特に現在62歳の定年退職年齢を段階的に65歳に引き上げる年金制度改革に対する一般市民の抵抗にも対処する必要がある。
レームダック
年金制度はフランスでは常に議論の的となる。マクロン氏は2017年の前回と比べてルペン氏との得票差が小さく、過去20年間で再選された唯一の大統領となったにもかかわらず、改革を実現する力は5年前と同じではないだろう。
サクソ・バンクのエコノミスト、クリストファー・デンビック氏は「マクロン氏は消去法で選ばれた。年金制度のようなセンシティブな改革を進めようとすれば大きな社会的不満に直面し、レームダック(死に体)化するリスクがある」と指摘した。