「蜜月」なき船出 再選されたマクロンに立ちはだかる課題
既に前途多難の兆しが出ている。マクロン氏は選挙戦で年金制度改革に怒った有権者から繰り返し批判を受け、定年退職年齢の上限を64歳をとする可能性を認めざるを得なくなった。
国内最大の労組の1つである共産党系CGTのフィリップ・マルティネス委員長は既に、マクロン氏には政権発足後に批判が抑制的になりがちな最初の100日を指す「ハネムーン(蜜月)期間」はなく、政策の完全な見直しがなければデモが起こる可能性があると警告した。
トップダウン式政治はもはや通用せず?
選挙直後に対処すべきもう一つの危うい課題がエネルギー価格の高騰だ。
マクロン政権は選挙が終わるまで電気料金に上限を定め、ガソリン価格に割引制度を導入している。選挙期間中、必要な限り有権者を守ると述べたが、期限は示さなかった。
はっきりしているのは、コストのかかるこうした措置をいつかは解除しなければならないということだ。一方、議員の間からは、有権者は既にウクライナ産のヒマワリ油やコメ、パンなど、さまざまな主要食材の価格高騰に不満を抱いているとの声が上がっている。
2018年にはガソリン価格高騰をきっかけに、マクロン政権に抗議する「黄色いベスト運動」が発生。1968年の学生運動以来、最悪の社会不安となり、パリや各地の環状交差点が数カ月にわたり混乱した。
つまりマクロン氏が火薬庫の再爆発を望まないなら慎重な行動が欠かせない。
1期目には傲慢で、人を見下すような失言が少なくなかった。悪感情を抱いている国民は多く、選挙戦では「第五共和制で最悪の大統領」との言葉も浴びせられた。
政治的に近い勢力はマクロン氏に対して、もっと議員や労組、市民社会と意思の疎通を図り、マクロン氏自身が高らかに「ジュピタリアン(全知全能の神のような方法)」と表現した1期目のトップダウン式政治スタイルから脱却する必要があると警鐘を鳴らしている。
パトリック・ビニャル議員は「マクロン氏は『高所からすべてを決めることはできない。企業のトップではない』というメッセージを受け取った。交渉や協議という考え方を受け入れる必要がある」と述べた。
(Michel Rose記者)