最新記事

フランス

「蜜月」なき船出 再選されたマクロンに立ちはだかる課題

2022年4月25日(月)19時09分
フランスのマクロン大統領

フランスのマクロン大統領(写真)は大統領選決選投票で極右候補のマリーヌ・ルペン氏を退け、再選を確実にした。パリで開かれた勝利集会で撮影(2022年 ロイター/Benoit Tessier)

フランスのマクロン大統領は24日に投開票された大統領選決選投票で極右候補のマリーヌ・ルペン氏を退け、再選を確実にした。しかし国内では政治的な対立や社会不満が高まっており、2期目の道のりは1期目よりもかなり厳しいものになりそうだ。

24日にエッフェル塔近くで開かれた集会でマクロン氏の支持者らは、苦労して勝ち取った再選の味をかみしめた。しかし当のマクロン氏は勝利演説で、多くの国民が自分に投票したのはルペン氏の当選を阻止するためで、自分の主張が支持されたからではないと認めた。

ブリジット夫人を伴って演説したマクロン氏は「誰も取り残さない。2期目の使命は1期目とは異なる。より良い5年間のために、共に新しいやり方を作り出していく」と訴えた。

わずか数週間後に次のハードルが控えている。マクロン氏は過去に例のない大幅な福祉制度の改革を目指しているが、その成否は6月の議会選でどのような政権が成立するかにかかっている。

通常、大統領選直後に行われる議会選挙は、敗北した候補者の支持者の投票率が低くなり、新しく選出された大統領が議会で過半数の勢力を獲得すると見込むことができる。

しかしルペン氏は敗北を認める演説で、議会で強力な野党ブロックを作ると言明し、対立姿勢を鮮明にした。一方、極左のジャン・リュック・メランション氏は第1回投票で左派票の大半を獲得し、首相就任を視野に入れている。

メランション氏は余勢を駆って議会で過半数を制し、大統領に党派が異なる首相と共存する「コアビタシオン」を強いることを目指している。

マクロン氏の勢力が過半数を獲得するか、もしくは実行可能な連立協定を結んだとしても、同氏は改革計画、特に現在62歳の定年退職年齢を段階的に65歳に引き上げる年金制度改革に対する一般市民の抵抗にも対処する必要がある。

レームダック

年金制度はフランスでは常に議論の的となる。マクロン氏は2017年の前回と比べてルペン氏との得票差が小さく、過去20年間で再選された唯一の大統領となったにもかかわらず、改革を実現する力は5年前と同じではないだろう。

サクソ・バンクのエコノミスト、クリストファー・デンビック氏は「マクロン氏は消去法で選ばれた。年金制度のようなセンシティブな改革を進めようとすれば大きな社会的不満に直面し、レームダック(死に体)化するリスクがある」と指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏のロシア産原油関税警告、市場の反応は限定

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、突っ込み警戒感生じ幅広く

ワールド

イスラエルが人質解放・停戦延長を提案、ガザ南部で本

ワールド

米、国際水域で深海採掘へ大統領令検討か 国連迂回で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中