最新記事

自動車

スマホに劣るカーナビはもういらない、トヨタが革命に着手

Toyota and Mapbox Say Goodbye to Dumb Navigation

2022年4月20日(水)17時16分
ジェイク・リンゲマン

車に搭載されたカーナビの地図が古くなると買い替えずにスマホを使う人が多いがそれも変わる? TongTa-iStock.

<地図データ会社との連携でトヨタのカーナビが生まれ変わる。純正カーナビもスマートフォン並みにラクラク更新される時代がやってきた>

地図更新のためのCDやUSBメモリ、ディーラー通いは、もう必要ない。カーナビに新たな時代がやってきた。

トヨタは、次世代インフォテインメント・システムを搭載した車に向けて、スマートでオープンソースかつ適応性のある地図を作製するために、ウェブ型地図プラットフォームを開発するマップボックス社と提携。自動車搭載ナビの「古くて使えない」地図に別れを告げようとしている。

この技術は、すでに北米トヨタのピックアップトラック「タンドラ」や、レクサスのクロスオーバーSUV「NX」などに導入されている。

市場調査会社JDパワーが発表した2021年米国新車初期品質調査によれば、カーオーナーが抱く不満のトップ3に、アプリの使い勝手、スマートフォンと車両の接続の問題が含まれている。マップボックスがめざすのは、こうした不満を両方とも解消することだ。

「車を購入した顧客は、時が経って搭載カーナビの情報が古くなると、高価なシステムにそっぽを向いてスマートフォンに鞍替えし、Wazeなどのナビアプリを使い始める」と、マップボックスのピーター・シロタCEOは本誌に語る。「自動車を製造する側は、それを避けたいと考えている。だから、没入型体験ができる環境を作ろうとしている。求められているのは、携帯電話が提供するナビゲーションの正確さと品質、そしてハードウェアが提供できる安全性と双方向性だ」

常に最新の地図に更新

通常、車の購入時に取り付けられている純正カーナビの地図は、データが固定されており、変わることがない。スマートフォンの地図は常に更新されているが、カーナビの地図は時と共に古くなる。

だがマップボックスの地図は、車を走らせるたびに更新される。数年に一度、大きな更新情報をダウンロードするかわりに、トヨタが展開する通信サポートサービスT-Connect(ティーコネクト)に加入していれば、小さな更新で済む。

マップボックスは、トヨタをはじめさまざまな企業のデータを統合し、カスタマイズ可能な地図システムを構築することができる。現在、同社には350万人以上の開発者が登録し、アクティブユーザーは6億5000万人、週に21億マイルのデータを収集する。

「オール・トレイルズ、ペロトン、ポラリス、ニューヨーク・タイムズなどが提供する何万ものアプリケーションがマップボックスを利用している」とシロタは言う。「当社の顧客は最初から、個々の特定の使用事例に適応する地域を対象とした、使いやすい機能を提供したいと考える企業ばかりだ。様々なマップは見たところ、まったく異なるものだが、同じマップボックスのプラットフォームの上に乗っている」

ここでカギとなる要素のひとつは、季節や運転者、ブランド、あるいは地域(日本、ヨーロッパ、北米となど)にあわせて、地図の再設計が可能なことだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中