NY高級マンション所有者はロシア人だらけだった...オリガルヒの栄華に迫る当局
OLIGARCHS IN NEW YORK
多くのロシア人購入者は弁護士や部下や、富裕層の資産を管理するプライベートバンカーの陰に隠れていた。こうしたアドバイザーは少なくとも、これらの取引の多くでロシア人富豪に会おうとする不動産業者をチェックする「門番」として重要な役割を果たした。実際、市場が落ち込んだ時期は特に、多くの不動産業者がロシアの富豪たちに会った。
リーマン・ショックの余波も
ニューヨークの最高級物件を扱うサザビーズの不動産仲介ブランドを率いるニッキ・フィールドは、08年9月のリーマン・ショックから3週間足らずの頃、モスクワにいた。当時はオフィスの電話が鳴りやまなかったと、フィールドは振り返る。突然職を失ったり経済的苦境に陥ったりして別荘を売却したいという富裕層からで、破綻したリーマン・ブラザーズやベアー・スターンズで働いていた者の場合はマンハッタンの物件を手放したいと言ってきた。
パン・アメリカン航空の元フライトアテンダントでマーケティング担当役員も務めたフィールドは、すぐに問題に気付いた。融資が焦げ付き、富裕層は欧米の金融システム崩壊に備えて金の延べ棒を買い占めて、ニューヨークには高級物件の買い手がいなくなったのだ。
「彼らが退去する物件を引き受け、急いで売らなくてはならなかった」と、フィールドは言う。
皮肉にも、購入に興味を示すロシア人が直面する最大の難題は、アメリカではなく母国の規制要件だった。
「資金をロシアから動かすには、それらの資金について税金の未納がないことを証明する必要がある。しかもロシアの人々は税金が嫌いだ」と、ウクライナ出身でロシア人富豪向けの高級不動産取引専門の弁護士をしていたエドワード・マーメルスタインは言う。12年に私が初めて話を聞いたときは、それまでロシア人向けに500件以上仲介したが、きちんと税金を納めているクライアントとしか付き合っていないと話していた。
これとは対照的に、アメリカの場合、現行法では不動産業者は「しかるべき質問をする義務はなく、基本的に事務手続きだけで物件を売買できる」と、TIのカルマンは言う。
15年、ニューヨーク・タイムズ(NYT)は日曜版に「秘密のタワー」と題する調査報道シリーズの第1回を掲載。タイム・ワーナー・センターの物件の販売とLLCの陰に隠れた多くの怪しげな外国人購入者を結び付け、開示要件の大きな抜け穴と、それがマネーロンダリングに利用される可能性に光を当てた。