最新記事

経済制裁

NY高級マンション所有者はロシア人だらけだった...オリガルヒの栄華に迫る当局

OLIGARCHS IN NEW YORK

2022年4月20日(水)17時09分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

ただし、これを徹底させるには、業界ごとに必要な顧客調査の基準を細かく設定しなければならない。その業務の煩雑さに米財務省が音を上げ、不動産業、投資アドバイザー、ヨットや飛行機の取引仲介業など一部の業界はこの規定の適用対象から一時的に除外されることになった。

「それから20年もたつのに」、いまだに「一時的に除外」されたままだと、上院小委員会の主任顧問を務めたエリース・ビーンはため息をつく。

この適用除外を待ち構えていたように、00年代末から10年代初めにかけてロシアの富豪がアメリカの不動産を買いに走ったのはただの偶然だろうか。彼らの多くは実名が出ることを嫌ったが、なかにはメディアを騒がせた人物もいる。その1人が、90年代にロシアの蔵相代行を務めたアンドレイ・バビロフだ。

プラザ・ホテルのペントハウスを5350万ドルで購入

ロシア捜査当局は、バビロフが97年にミグ戦闘機のインド売却絡みで2億3000万ドルを着服した疑惑を捜査した(容疑否認のまま時効成立)。

バビロフは08年、ニューヨークのプラザ・ホテルのペントハウスを5350万ドルで購入したが「高級ペントハウスのリビングというより屋根裏部屋のよう」だったとして、開発業者らを相手に訴訟を起こした(その後、タイム・ワーナー・センターの約770平方メートルのマンションを3750万ドルで購入。こちらはマスターベッドルームに浴室が2つ、ニューヨークの街を一望できる)。

ロシアのエンターテインメント界の大御所イゴール・クルトイもバビロフ同様、プラザ・ホテルの高級マンションを購入。面積約560平方メートルの物件を4800万ドル超というニューヨークでは過去最高で手に入れて名をはせた(その後リボロフレフが記録を更新)。さらに後日、高級住宅街サウサンプトンのジンレーンにあるマンションも購入。壊して新たなマンションを建てるつもりだと仲介業者に語ったという。

ニューヨークで不動産を購入したオリガルヒで最も有名なのは、ロマン・アブラモビッチかもしれない。プーチンの側近で、ソ連崩壊後に石油やアルミニウムなど天然資源を掌握して財を成した人物だ。サッカーのイングランド・プレミアリーグの名門クラブであるチェルシーの元オーナーで、6億ドルのヨットも所有し、推定資産総額は120億ドル以上。彼が手に入れたアッパー・イーストサイドの物件6つの推定時価総額は、9230万ドルに上る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中