最新記事

ジェンダー差別

医学部入試で、女子の点数の不正操作はなくなったのか

2022年4月20日(水)10時40分
舞田敏彦(教育社会学者)
女性医師

日本では女性医師の割合が2割程度にとどまっている Anchly/iStock.

<問題が発覚した2018年以降、女子の医学部合格率は国立、私立ともに大幅に改善された>

毎年公表されるジェンダーギャップ指数で「無様」な位置にある日本だが、特に酷いのは政治分野だ。2021年のデータだと156カ国中147位。言わずもがな、国会議員等の政治家の女性比率が低いためだ。

女性比率が低いのは政治家だけではない。高度専門職もそうで、例えば2019年の医師の女性比率は21.8%でしかない(OECD「Health at a Glance 2021」)。他国はというと、アメリカは37.0%、イギリスは48.6%、スウェーデンは49.6%とほぼ半数だ。OECD加盟国の数値を出すと、37カ国14カ国で医師の女性比率は50%を超えている。日本の状況は特異だ。

これがなぜかについては、女子が医師などを志すと周囲から止められる、理系の進路に進むと変わり者扱いされる、そもそも女性医師のモデルを目にする機会がない......。こういうことがよく言われるが、こうした社会の風潮とは別の可能性も出てきている。医学部入試での不正だ。

2018年、某私立大学医学部入試で女子の点数を操作していた不正が発覚した。女性医師は職場定着率が低い、できるだけ男子をとりたい。こういう思惑だろうが、医師を志す女子の努力をあざ笑うもので断じて許されない。

それ以降、あからさまな不正はできなくなっているはずだが、医学部入試の合格率の性差はどう変わったか。文科省の『学校基本調査』に、大学の医学専攻の入学志願者(延べ数)と、実際の入学者の数が出ている。後者を前者で割れば、合格率の近似値になるだろう。<表1>は、データがとれる2015年から2021年までの推移を跡付けたものだ。

data0420-chart01.png

一番下の入学者率をみると、不正が発覚する2018年までは「男子>女子」だったが、翌年には反転し、女子の合格率が男子より高い傾向が現在まで続いている。

個々の大学で見ても、合格率の性差は変わっている。80大学の医学医学科の入試合格率を見ると、女子が男子を上回る大学は2013~18年度(平均値)では17大学だったが、2021年度では47大学と半数を超えている(文科省の『医学部医学科の入学者選抜における公正確保に係る調査』)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUと米、ジョージアのスパイ法案非難 現地では抗議

ビジネス

EXCLUSIVE-グレンコア、英アングロへの買収

ワールド

中国軍機14機が中間線越え、中国軍は「実践上陸訓練

ビジネス

EXCLUSIVE-スイスUBS、資産運用業務見直
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中