世界はプーチンの非道を裁けるか 「戦争犯罪」訴追の壁
◎訴追可能な人物
専門家によると、戦争犯罪の捜査対象は兵士、司令官、国家元首などが考えられる。
検察官はプーチン大統領など元首による戦争犯罪を追及する場合、違法な攻撃を直接命令した、もしくは戦争犯罪が行われていると知りながら阻止しなかった証拠を示すことができる。
◎戦争犯罪裁判で有罪を勝ち取るのが難しい理由
法律専門家は、マリウポリの産科小児科病院や劇場への爆撃が、戦争犯罪の定義に当てはまるとみている。しかし有罪を確保するのは困難かもしれない。
多くのケースでは、攻撃が意図的だったことや、指導者が個別の攻撃を直接命令したことを証明するのに壁に直面する。また、検察は戦争地帯での証拠集めに苦心する可能性がある。目撃者が怖がったり、話したがらなかったりすることもある。
ウクライナの場合、ICCは公に入手可能な動画や写真をくまなく検証するだろう。
被告を裁判に引っ張り出すのにも苦心するかもしれない。ロシアが逮捕状に従うのを拒否することは、ほぼ確実だ。ICCは、被告になりそうな人物らが他国に渡航しないか追跡し続ける必要も生じる。
◎有罪判決の前例はあるか
ICCのウェブサイトによると、同裁判所は設立以来30件の事例を扱っており、複数の被告を取り合ったケースもある。戦争犯罪、人道に対する罪、集団殺害犯罪で有罪としたのは5人で、無罪としたのは4人。コンゴ民主共和国(旧ザイール)の武装勢力指導者トマス・ルバンガ受刑囚は2012年に有罪判決を言い渡された。
ICCが逮捕状を出したものの、依然として逃亡中の被告もウガンダの反政府武装組織司令官ジョゼフ・コニー被告など数人いる。
国連は1993年、旧ユーゴスラビア紛争の戦後処理を目的に、ICCとは別に国際刑事裁判所を設置。161人を訴追し、90人に有罪判決を下した。
その1年後、国連はルワンダについても集団殺害などの罪を裁くために国際刑事裁判所を設置し、93人を訴追し、62人に有罪判決を下した。
ウクライナにおける戦争犯罪の検証に際しても、国連もしくは何らかの協定を通じて個別の裁判所が設立される可能性がある、と法律専門家は指摘している。
(Jacqueline Thomsen記者、 Mike Scarcella記者)
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