ロシアがウクライナのGPSに妨害攻撃か 米宇宙軍が言明
ロシアによるGPS妨害は侵攻以前からたびたび発生していた...... imaginima-iStock
<ドローンや救護車両などの運用に欠かせないGPSが、ウクライナで妨害を受けているという。米宇宙軍幹部が明かした>
ウクライナ軍および市民は現在、GPS(全地球測位システム)による正確な位置情報を得られていない可能性がある。米宇宙軍で作戦担当副本部長を務めるデイヴィッド・トンプソン将軍が、米NBCの番組に出演し、ロシアによる妨害工作の可能性を明かした。
番組司会者が「ウクライナではGPSが利用不能になっているのですか?」と問いかけると、氏は「その通りです。ロシアはアメリカが提供するGPS信号をウクライナ国内で妨害しています。辺りには妨害工作車が存在し、(GPS信号の)受信と利用を妨げているため、ウクライナの人々はGPSを利用できない可能性があります」と説明した。
Russia Is Jamming U.S.-Provided GPS Signals In Ukraine, U.S. General Says
GPSが機能不全となれば、戦線への直接的な影響が懸念される。ウクライナでは軍事ドローン「バイラクタルTB2」がロシア戦車を相手に善戦し、市販の小型ドローンも偵察に貢献している。これらの飛行制御はGPSに依存している。
【参考記事】
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戦禍の国民生活にも悪影響が及びかねない。自動車の車載ナビやスマホの地図などはGPSを前提としており、救助車両の到着の遅れなど市民生活への支障が憂慮される。
GPSは、アメリカ宇宙軍が運用する衛星測位システムだ。ウクライナを含む世界の多くの国で利用されているが、妨害はウクライナ国内に留まるとみられる。衛星測位システムにはGPSのほか、欧州版の「ガリレオ」やロシア版の「GLONASS(グロナス)」などが存在する。
地上の信号を妨害
ロシア側はGPS衛星を直接攻撃することなく、地上の補助的な送信設備をねらった模様だ。
GPSのしくみとして、約30基の衛星が軌道上に配備されている。予備機を除く24基が稼働しており、このうち少なくとも4基の電波を捉えることで現在地を算出するしくみだ。電波には発信時刻と衛星の位置が記録されており、発信から受信までにかかった時間差をもとに各衛星との距離を計算し、現在地を特定する。
ただし、衛星からの電波だけでは、10メートル程度の誤差が生じる。このため、地上のGPS基地局からも並行して電波を受信し、精度向上のヒントとして利用する。今回ロシア側の妨害を受けているのは、この地上局が発する電波だ。
妨害は今回が初というわけではなく、侵攻以前からたびたび発生していた。米シンクタンクの戦略国際問題研究所は、2014年ごろから断続的に行なわれてきたと分析している。宇宙ポータルサイトの『Space.com』によると、ロシア軍は大型トラックのような形状の独自開発の車両を保有しており、ここに妨害装置が搭載されているという。
ロシア版GPSは「数年内に崩壊」説も
ウクライへの妨害を活発化するロシアだが、一方で自身の衛星については、かなりお粗末といわざるを得ない状況だ。ロシア版衛星測位システム「GLONASS」を開発したものの、綱渡りの運用が続く。