ロシアがウクライナのGPSに妨害攻撃か 米宇宙軍が言明
GLONASSでは本来24基の衛星が必要なところ、稼働中の衛星はこれを下回る23基だ。6基前後の豊富な予備機を擁するGPSとの差異が際立つ。さらに、GLONASSには寿命間近の機体も多く、半数ほどはいつ動作不良に陥ってもおかしくない。設計上の数を満たせなくなるとまず一部地域で精度が低下し、その後18基を割った時点でロシア全域をカバーできなくなる。
匿名の専門家は欧州報道機関の『ラジオ・フリー・ヨーロッパ』に対し、「打ち上げの動向を根本的に変えない限り、GLONASSシステムは数年以内に崩壊を迎えるでしょう」との予測を示している。
位置情報のみならず偵察衛星網についても、衛星の数が少なすぎるとの指摘がある。個々の機体としても解像度の低い旧式の技術を採用しているうえ、一部衛星には耐用年数の限界が近づく。これが偵察活動の不調を招き、キーウ陥落作戦の主な失敗要因のひとつになったとの観測すら出ているほどだ。
対するウクライナは、アメリカから偵察衛星の画像提供を受けている。その仔細は明かされていないが、仮に高解像度のスパイ衛星である「キーホール12」シリーズの画像を入手しているとするならば、その解像度は1ピクセルあたり5センチほどだ。面積あたりでは商用衛星の9倍の精度となる。ラジオ・フリー・ヨーロッパは、ロシア車両に描かれた「V」の文字も容易に読めるほどだと述べ、両陣営間の偵察精度の差異を指摘している。
衛星への直接攻撃もあり得る
ただし、ロシア側は乱暴な一手で性能差を詰めてくる可能性がある。アメリカ宇宙軍は、米衛星への直接攻撃も起こりうるとみて監視体制を強化している。
ブルームバーグは、アメリカ国防情報局の最新の見解を報じている。それによると同局は、ロシアが「アメリカの宇宙関連サービスを無力化あるいは阻止する対抗システムを推進している」とみて警戒を強めている。
同局がまとめた報告書は、ロシアがすでに「衛星のセンサーの目を眩ますものを含め、複数の地上レーザーを保有している」との見解を示し、「おそらく2020年代中盤から終盤にかけて、さらに効果的に衛星を損傷するためのレーザーを配備するだろう」と分析している。
ロシア自身の衛星網に抜きん出た点はないものの、妨害の手法は今後も発展する可能性がありそうだ。