ウクライナ、児童養護施設にいた10万人の子どもたち 戦時下で厳しい状況に
「セーブ・ザ・チルドレン」のブライドン氏は、子どもたちを助けたいと切望する養親希望者からの問い合わせが「殺到している」ものの、法的基準が無視され、まだ存命の両親から子どもたちが引き離されるリスクもあると警告する。
そうなると、リビウにいる47人をはじめとする児童養護施設にいる子どもたちにとって、戦火が収まるのを待つ他になすすべはないのかもしれない。
サイレンが鳴ると泣き叫ぶ子供も
戦争が始まったとき、リシチャンスクの児童養護施設に勤務していた養護職員のトロノワさんは、2月24日の明け方に受けた電話を鮮明に記憶している。
「オルガ、急げ!子どもたちを連れ出してくれ」電話の主は養護施設の所長だった。その後遠くで爆発音が聞こえたという。トロノワさんは、自分の家族は残したまま、子どもたちを急いで避難させた。
リビウまでは列車で3日間。最年少の子どもたちは体調を崩した。「ここに着いたときは皆が吐き気を訴え、嘔吐や発熱が見られた」とハブリリュク所長は語った。
その後、トロノワさんをはじめとする養護職員らは、大学生ボランティアたちに助けられ、平静さと落ち着きの感覚を取り戻そうとしている。
子どもたちは、十分な食事を与えられ、青と緑の壁に花や木や動物が描かれたこざっぱりとした宿舎で眠っている。
戦前は挨拶もほとんど交わさなかった近隣の住民が、食料や衣服、おもちゃを施設にたくさん提供してくれた。ロイターが取材に訪れた日には、ポーランドの慈善団体が「Courage(勇気)」と書かれたテディベアのぬいぐるみをフランスから送ってくれた。
リビウは他の都市よりは比較的落ち着いているが、それでも夜間には空襲警報が鳴り響くこともあり、戦争は決して遠い場所の出来事ではない。
「子どもたちは眠っていても、サイレンが鳴ると泣き叫ぶ」とハブリリュク所長は語る。
リシチャンスクから来た23人の子どもたちのうち、2人の例外を除く全員が、まだ法的には両親の親権下にある。平時であれば、家族から親権を剥奪するかどうかは裁判所の判断による。
精神的な問題を抱えるティモフェイくん(11)は、あと2日で養親に引き渡されるところだったが、リビウに避難したために白紙となった。
「ティモフェイはとても怒っている」とトロノワさんは語る。「自分や子どもたちが今後どうなるのか、まったく予想できない。私たちの行く末は神の御心のままだ、としか言えない」
(Silvia Aloisi記者、Margaryta Chornokondratenko記者、ZohraBensemra記者、翻訳:エァクレーレン)
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