ウクライナ、児童養護施設にいた10万人の子どもたち 戦時下で厳しい状況に
米国政府の統計によれば、過去15年間、米国の養親が引き取った養子の出身国としてウクライナは欧州で首位となっている。
ただし、ユニセフや「セーブ・ザ・チルドレン」といった児童福祉団体は、以前からウクライナの児童擁護制度を疑問視してきた。家族が限界に達する前に支援することを可能な限り優先すべきである、というのがこれらの団体の持論だからだ。
そして今、養護施設にいる何万人もの子どもたちは、戦火によりさらなる混乱に見舞われている。
社会政策省によれば、3月19日の時点で、全体の約4分の1にあたる179カ所の公立の児童養護施設が避難を余儀なくされており、養護職員らは、子どもたちを戦場からより遠ざけるためであれば、親や法定後見人のもとに戻すべきかどうかという難しい判断を迫られている。
リビウの児童養護施設の子どもたちを支援している児童心理学者のオレクシイ・ヘリウク氏によれば、適切な審査なしに子どもたちを帰宅させることは有害無益になる可能性があるという。
「子どもたちが家庭から引き離されるのは、理由があってのことだ。平時に子どもたちのニーズが満たされていなかったのであれば、戦時ではさらに状況が悪化しかねない」
だが、社会政策省の管轄下でリビウ地域での児童保護行政を率いるウォロディミル・リス氏は、戦争という危険な状況の下では、管轄当局にとって選択の余地などほとんどない、と言う。
「最大のリスクは空爆で殺されることに決まっているではないか。(略)親がどんな人間であっても、それでも親であることには変わらない」
独りで旅する子どもたち
子どもたちが両親と暮らしていた場合でも、戦火による別離が生じている。複数の援助機関は、かなりの数の子どもたちが保護者を伴わずに、近隣諸国、あるいはさらに遠くの国へと移動していると警告している。
2014年以降ウクライナで活動している「セーブ・ザ・チルドレン」の児童保護専門家アマンダ・ブライドン氏は、「単独で旅する子どもたちが、最終的にスペインやイタリア、オランダ、ドイツにまで到着したという報告を受けている」と語った。
同氏は、こうした子どもたちが、欧州内の親戚や友人のもとを頼って移動している可能性もある、と語る。だが、懸念されるのは人身売買だ。
「残念ながら、こうした子どもたちを整然と登録・追跡するシステムは整っていない」と同氏は言う。「追跡を試みようとしても、かなり込み入ったシステムになっている」
リビウ地域の児童保護行政を担当するリス氏によれば、国際的な援助機関による国内外での支援のおかげで、開戦後数週間に比べて状況は改善されてきたと言う。
書類や記録の消失・破損が進む中で、ユニセフの推計ではこれまでに180万人の子どもたちが国外に逃れたとされているが、ウクライナ政府は国境での検問を強化し、コロナ禍による緊急事態のためにすでに混乱が生じていた養子縁組の手続きを停止した。
援助機関は、この措置を歓迎している。