ウクライナ避難民の子どもたちにも春 異国の地で入学、新たな日々がスタート
写真は18日、独ドュッセルドルフの小学校が用意した入学前の準備クラスに通うウクライナからの難民の子供たち(2022年 ロイター/Thilo Schmuelgen)
アイルランドの首都ダブリンが「セントパトリックデー」の祝日でにぎわった先週──。酒盛りをする人々に交じり、ほほにウクライナ国旗をペイントした小さなおさげの少女が立っていた。大きすぎる緑色の帽子は、今度入った学校からの贈り物だ。
8歳のバルバラ・コスロフスカさんは、ウクライナを逃れた150万人余りの子どもの1人。1カ月前に始まった戦争は、第2次世界大戦以降で最も急拡大する難民危機を欧州にもたらした。
アイルランドからポーランドに至るまで、各国はクラスの拡大、ウクライナ人教師の登録手続き迅速化、授業内容の翻訳、オンライン授業の提供など、祖国を離れた児童が教育の機会を失わないための取り組みを進めている。
バルバラさんと弟のプラトン君(5歳)、いとこのイワン君(9歳)、イゴール君(7歳)の4人は、ウクライナの首都キエフから長旅を経てアイルランドに到着。その数日後には新しい小学校に通い始めた。
バルバラさんの英語はほんの片言だが、それでも満面の笑顔で堂々とトムソンロイターのオンライン取材に答え、新しい生活について話してくれた。
「女の子全員が私と友達になりたがってくれる。みんなが助けてくれる。プレゼントもいっぱいもらった」。画面越しに掲げて見せるのは、星模様の新しい青いスクールバッグ。校長先生からの贈り物だという。
国連児童基金(ユニセフ)によると、欧州諸国はウクライナ難民の子どもたちを到着後3カ月以内に学校に受け入れると約束している。
ただでさえ少ない予算やクラス規模の大きさ、コロナ禍の影響と格闘している各国の教育制度にとって、難民の受け入れは大がかりな取り組みだ。言語や心理面で専門的な支援を必要とする難民の子どもも多い。
ユニセフは、子どもを素早く学校に復帰させることは、子どもたち自身の成長だけでなく、ウクライナの将来にとっても非常に重要だと指摘する。
ユニセフの広報担当、ジョー・イングリッシュ氏は「学校は短期的には、トラウマを乗り越えるための支えと安定、組織を子どもたちに提供する。長期的には、紛争が終わった時に故郷を建て直すのに必要な知識とスキルを授ける」と説明した。
大きな連帯
ユニセフによると、これまでに360万人余りのウクライナ人が国を脱出しており、うち約半分が子どもだ。ポーランド、ルーマニア、モルドバ、ハンガリーの4カ国に逃れた難民が最も多い。
アイルランドは、ロシアがウクライナに侵攻した2月24日の直後にウクライナ人について査証(ビザ)を免除した。アイルランドに住むウクライナ人は最近まで約5000人だったが、今では倍以上に増えた。
アイルランドは難民の子どもを支えるため、ウクライナ人教師の受け入れを優先している。