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ウクライナ危機

プーチンは戦争に負けたことがない、この戦争は長くは続かない

WHY PUTIN WILL WIN AGAIN

2022年3月9日(水)15時50分
ビル・パウエル(本誌元モスクワ支局長)、ナビード・ジャマリ(本誌記者)

その後も追加的な制裁を繰り出し、国際的な金融取引のシステムからロシアを実質的に排除する手も打った。

だがプーチンは動じない。ロシアには6300億ドル以上の外貨準備があるし、石油と天然ガスの輸出で毎月140億ドルも稼いでいるからだ。

ロシアの駐スウェーデン大使ビクトル・タタリンツェフが侵攻直前に語ったように、西側陣営の経済制裁などは「言い方は悪いが、屁でもない」のかもしれない。

一方のバイデンは侵攻初日の演説で、これでプーチンは自ら墓穴を掘ったことになると断じた。「歴史には先例が山ほどある。領土を奪うのは簡単でも、占領の継続は苦しい。大規模な市民的不服従が起き、戦略的に行き詰まる」

実際、今のウクライナでも多くの市民が即席の軍事訓練を受け、ロシア兵と戦う「領土防衛機関」に加わっている。

だがアメリカでも、情報機関の専門家はバイデンほど強気でも楽観的でもない。

ある当局者は本誌に、オフレコを条件に言ったものだ。「ひとたびキエフの政府が倒れたら、こちらが軍事支援をしたくても、その受け皿となる勢力がウクライナには存在しないだろう」と。

人命の損失など気にしない

そうまで悲観的になるのは、プーチンには過去の「実績」があるからだ。例えば、もう20年以上も前のチェチェン紛争でやった焦土作戦を見ればいい。

この当局者は言う。「抵抗運動を組織するというのは非現実的だ。こちら側の人間と違って、(プーチンは)人命など尊重しない。だから(彼の軍隊は)いかなる抵抗勢力も全滅させる」

そのとおりだ。アメリカはベトナムやイラクで地獄を見たが、ロシアがウクライナでそうなると信ずる根拠はない。

ロシア軍最高司令官としてのプーチンはチェチェンで、抵抗するイスラム教徒を惨殺した。2008年には旧ソ連構成国のジョージアの2つの地方に軍を送り、力ずくで奪い取った。2014年にはウクライナのクリミア半島を一方的に併合し、ロシア系住民の多い東部ドネツク州とルガンスク州で反乱を起こさせた。

アメリカとロシアの双方が首を突っ込んだ中東シリアの内戦はどうなったか。

アメリカのオバマ政権(当時)は反政府勢力を支援したものの、シリアのバシャル・アサド政権が反対派への攻撃に毒ガスを用い、いわゆる「越えてはならない一線」を越えたとき、実力行使には出なかった。

対するプーチンは、アサド政権の存続という明快かつ単純な目標を掲げ、迷わずロシア軍を送り込んだ。おかげでアサドは今も大統領だ。

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