プーチンは戦争に負けたことがない、この戦争は長くは続かない
WHY PUTIN WILL WIN AGAIN
実際、そうなる日は近いかもしれないと、米情報機関の当局者は本誌に語った。ウクライナ全土を軍事力で占領しなくても、プーチンは現代版ロシア皇帝になれる。
イルベスも、「プーチンが欲しいのはベラルーシのような傀儡政権だ」と言う。北のベラルーシに加えて南のウクライナも思いのままに操れるようになれば、「皇帝」プーチンとNATO陣営の力関係は大きく変わるだろう。
こうした見方はウクライナ国内にもあるようだ。
駐米ウクライナ大使館から提供された大統領顧問ミハイロ・ポドリャクの声明によると、「ウクライナ大統領府は現在、ロシアには2つの戦術的目標があると考えている。まずわが国の領土の一部の掌握と、わが国の合法的な政権を倒して国内の混乱を拡大する。そして操り人形をトップに据えてロシアとの平和協定を結ばせることだ」。
「恐怖」で世界を支配する
アメリカ政府は近年、アジアに軸足を移し、中国の封じ込めに注力してきたが、これでいや応なく東欧に引き戻された。
言うまでもなく、ここでは長年にわたり血みどろの戦いが繰り返されてきた。そして今、プーチンは旧ソ連の歴代指導者並みに世界の注目を集めている。
ウクライナ侵攻初日の2月24日、プーチンはテレビ演説で言ったものだ。「(ウクライナに)干渉しようとする者は心得ておけ。ロシアは直ちに反撃し、かつて諸君が経験したことのないほどの結果をもたらすだろう」と。
その後、プーチンは核戦力部隊に臨戦態勢に入るよう命じ、その本気度を見せつけもした。
こうしてロシアは再び世界の注目を浴びる存在となり、その軍事力の行使により、大国ロシアの健在をアピールしている。プーチンの思惑どおりだ。
プーチンは信じている。ロシアは常に世界中から尊敬される存在であるべきで、それがかなわぬなら、(前出のルキヤノフの言を借りれば)「恐怖で世界を支配する」しかないと。
実際、ここまでは筋書きどおり。NATO元事務次長のローズ・ゴッテモラーがCBSのポッドキャストで言ったように、「今のプーチンは得意満面」のはずだ。
軍事侵攻が始まると、アメリカとその同盟諸国は直ちに強い経済制裁を発表したが、その効果は不透明だ。
西側からロシアへのハイテク製品輸出の半分以上が止まり、確実に「ロシアの産業力は低下」すると、ジョー・バイデン米大統領は言った。プーチンの取り巻きとされる人物の経営するロシア第2位の銀行VTBの海外資産も凍結した。