最新記事

ヘイトクライム

ニューヨークの地下鉄でアジア系への露骨な口撃が撮影される

2022年3月14日(月)19時15分
川口陽
ヘイトクライム

アトランタで発生した銃撃事件を受け、ヘイトクライムに抗議するアジア系住民(2021年3月、米デンバー) Alyson McClaran-REUTERS

<新型コロナウイルスの流行以来、激増したアジア人差別。撮影する女性に向かい、男は「全アジア人は死ぬべき」などとヘイトスピーチを続けた>

アジア人に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)が近年急増する中、ニューヨークの地下鉄でアジア系蔑視の暴言を吐く男の動画がインスタグラムに公開された。

今月5日、ニューヨークを拠点に活動する演出家キャット・イェンは、地下鉄タイムズスクエア42丁目駅でアジア人を露骨に差別する男と対峙し、その様子を撮影した。

身元不明の男は、至近距離のイェンに「全アジア人は死ぬべきだ」などと過激な持論を浴びせ、「それを言う権利がある」と主張する。

「なぜ中国人は我々の国にやってくる?」「どうして中国系アメリカ人は『自分の国』で生きられない?」とわめく男に対し、イェンはセントビンセント・ ミッドタウン病院で生まれたことを告げて応戦。この病院は、トラブルの現場となった駅からほんの数ブロックのところに位置する。

「私はレイシスト(人種差別主義者)で、自分の言っていることを誇りに思う。ただし、私はアジア人に対してのみレイシストなのであって、それは彼らが最悪だからだ」

好戦的な男からイェンを守るために他の乗客らが間に入り、別の乗客が男をホームへと引きずり出した。その後、駆け付けた警官によって男は逮捕された。

イェンは撮影の経緯についてインスタグラムに綴っている。投稿によると、男は2人の若いアジア人女性に差別発言を浴びせ、怖がっていた彼女たちが次の駅で降りると、今度は別のアジア人男性を標的に嫌がらせを始めたという。ヘイトスピーチの現場を捉えようと撮影を始めたところ、矛先はイェンに向けられた。

「残念ながら、こうした出来事はニューヨークに住む多くのアジア人が証言できるくらい、最近ごく当たり前に起きている」

投稿の中でイェンはまた、現場にいた警官に「これはヘイトクライムであり、映像もある」と訴えたものの一蹴されたことを強調している。

1月には今回と同じタイムズスクエア42丁目駅のホームで電車を待っていたアジア系女性が、線路に突き落とされて死亡する事件も発生。ニューヨーク市では昨年、アジア人に対するヘイトクライムが131件記録され、28件だった2020年から急増していることが分かる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国自動車輸出、4月は過去最高 国内販売は減少に減

ワールド

UNRWA本部、イスラエル住民の放火で閉鎖 事務局

ワールド

Xは豪州の法律無視できず、刃物事件動画訴訟で規制当

ビジネス

ドイツ住宅建設業者、半数が受注不足 値下げの動きも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカネを取り戻せない」――水原一平の罪状認否を前に米大学教授が厳しい予測

  • 4

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 5

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 6

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 7

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中