最新記事

ウクライナ危機

プーチンがウクライナに軍派遣命令 演説で歪んだ歴史認識と怨みを吐露

Putin Orders Russian Troops Into Ukraine’s Breakaway Provinces

2022年2月22日(火)18時17分
ロビー・グラマー/ジャック・デッチ/エイミー・マッキノン(フォーリン・ポリシー誌記者)

プーチンはデスクを前にして座り、ふんぞり返るような姿勢を取ったり、手振りを交えたりしながら、ウクライナ政府やNATOに対する不満を述べ立てた。アメリカがNATOの東方拡大を促してきたことへの長年の恨みや、ウクライナが独立国家であるという事実さえも容認できない考えを示した。旧ソ連を構成した複数の共和国はロシアを去るべきではなかったし、独立したウクライナなど存在すべきではないとプーチンは言った。アメリカおよびNATOから武器を提供されたウクライナは、ロシアにとって軍事的脅威になり得ると主張した。

「ウクライナが(大量破壊兵器を)入手すればすぐに、ヨーロッパの状況は大きく変わるだろう」とプーチンは述べ、アメリカがウクライナからいつでも軍事攻撃できるとつけ加えた。実際は、多くの米軍部隊は1週間以上前にウクライナから撤収しているが、プーチンは「彼らは我々の首にナイフを突きつけている」と主張。「我々としては対応を取らざるを得ない」と述べた。

現在のウクライナは「アメリカの植民地と化している」

またプーチンは、現在のウクライナは「西側の傀儡(かいらい)政権が動かす植民地」だと述べ、西側諸国がウクライナの政治に介入していると非難。また8年前に選挙で選ばれた親欧派のウクライナの指導者たちが、過去にテロ組織を組織したと述べ、「我々は彼らの名前を知っており、あらゆる手を尽くして彼らを罰するつもりだ」とつけ加えた。フォーリン・ポリシーは以前、ロシアがウクライナ占領後に殺害または収容を計画している親欧米派の政治家や反体制派、ジャーナリストのリストを作成したという情報を、アメリカが入手したと報じている。

プーチンの軍派遣命令は、西側首脳による外交努力を大きく後退させるものだ。バイデンは、フランスのマクロン大統領の仲介でプーチンと会談することに「原則的に」合意したばかりだった。この合意は反故になるのか、米政府はまだ発表していない。米政権高官は、いずれにせよ今後も外交努力は続くだろう、と語った。

From Foreign Policy Magazine

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中