最新記事

ウクライナ情勢

緊迫激化のウクライナ情勢 親ロ派地域の独立承認の意味と影響

2022年2月22日(火)10時49分
ロシアのプーチン大統領

ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東部の親ロシア派2地域の独立を承認するとテレビ演説で表明した。モスクワで19日撮影(2022年 ロイター/Sputnik/Aleksey Nikolskyi/Kremlin)

ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の親ロシア派2地域の独立を承認するとテレビ演説で表明した。緊迫するウクライナ危機において今回の決定がどういう意味を持つのか、西側諸国の対応とともにポイントを整理した。

◎親ロシア派の分離独立地域とは

ウクライナ東部にあるドンバス地域と呼ばれるドネツクとルガンスクでは、2014年にロシアが支援する分離独立派が「人民共和国」として独立を宣言したが、承認されていなかった。ウクライナ政府によると、宣言後に約1万5000人が戦闘で死亡。ロシアは紛争当事者であることを否定しているが、軍事・財政支援、新型コロナウイルスワクチンの提供、少なくとも80万人の住民に対するロシア旅券(パスポート)発行など、独立派を支援している。


◎ロシアの独立承認は何を意味するのか

ロシアはドンバス地域をウクライナの一部とは見なさないと初めて表明。これは分離独立地域に公然と軍隊を派遣し、ウクライナから独立派を保護するために同盟国として介入するという主張に道を開く可能性がある。

◎ミンスク合意はどうなるのか

ウクライナ東部の停戦と和平への道筋を示した「ミンスク合意」(14─15年)は、ロシアが親ロ地域の独立を承認したことで事実上消滅する。この和平合意はまだ履行されていないものの、これまでロシアを含む全ての当事者が紛争解決に向けた最善の機会と見なしていた。合意は親ロ2地域に対する大規模な自治を要求している。

◎西側はどう対応するのか

米欧など西側各国は数カ月にわたり、ロシアがウクライナ国境を越えて軍隊を展開すれば、厳しい金融制裁を含む強力な対応を取ると警告してきた。ブリンケン米国務長官は16日、ロシアが親ロ2地域の独立を承認すれば、「米国は同盟国、およびパートナー国と完全に協調して迅速に、かつ強硬に対応する」と表明。独立が承認されれば「ウクライナの主権と領土保全が一段と阻害され著しい国際法違反となる」と述べた。

◎ロシアは過去にも分離地域を国家承認したことがあるのか

08年にジョージアと短期間の交戦を行った後、アブハジアと南オセチアの独立を承認した。大規模な財政支援、住民のロシア国籍取得を行ったほか、数千人の部隊を駐留させている。

◎独立承認によるロシアの利点と欠点は

ジョージアの場合、ロシアは分離地域を承認することで旧ソ連周辺国への軍事駐留を正当化し、自国領土を完全に支配できないようにすることでジョージアの北大西洋条約機構(NATO)加盟構想に歯止めをかけようとした。ウクライナにも同じことが当てはまる。

一方、ロシアはミンスク合意にコミットしていると長く主張してきたにもかかわらず、それを放棄したことによる制裁と国際的非難に直面する。また、8年間にわたる戦闘で荒廃し、大規模な経済支援を必要とする2地域の責任を負うことになる。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ウクライナ危機で分断される欧州 米と連携強める英 宥和政策の独 独自外交唱える仏
・【ウクライナ侵攻軍事シナリオ】ロシア軍の破壊的ミサイルがキエフ上空も圧倒し、西側は手も足も出ない
・バイデン政権、ロシアのウクライナ侵攻準備を懸念「偽旗作戦の工作員が配置された」


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中