ぞくぞくする快感「ASMR」の研究が進む...ネガティブ思考の人の「不安軽減」効果も
The ASMR Brain Phenomenon
特定の聴覚的・視覚的刺激が引き起こすASMRの研究が進む YULIA LISITSA/SHUTTERSTOCK
<リラックス作用があるとして、動画サイトでも人気のASMR。体感できるのは一部の人だけとされるが......>
マッサージなど和む動作の中でのささやき声や何かを軽くたたく音――。
頭や首から全身に広がるぞくぞくするような快感と言われるASMR(自律感覚絶頂反応)は、幅広い種類の動画や聴覚的誘因によって引き起こされる。何がきっかけになるかはさまざまだが、今や世界各地の大勢の人にとって、ASMRはリラクゼーションや睡眠導入、ストレス軽減の頼れる友だ。
学術的関心が高まっているなか、未解決の問いは多い。ASMRを覚える人と、覚えない人がいるのはなぜか。治療の手段として検討するに当たっては、ASMRと性格的特徴の関連性を理解することが手掛かりになるのか。
登場し始めた研究文献が示すところでは、ASMRを感じる人は落ち込んだり、自己不信を抱いたりしがちなニューロティシズム(神経症傾向)がより強い。性格的特徴の1つであるニューロティシズムは、不安といったネガティブな心の状態に陥りやすい傾向とも結び付く。
ニューロティシズムとASMR体感者の不安の関連や、不安へのASMR動画視聴の効果を調べた研究はまだごく少ない。こうした点をさらに探るため、筆者らは新たな研究を行った。
「感じない人」にも効果はある
研究に参加したのは、ASMR体感者36人と非体感者28人だ。ASMRの一般的誘因を組み合わせた5分間の動画を、全員に視聴してもらった。
参加者は視聴前にニューロティシズム、特性不安(継続的不安を感じやすい傾向)や状態不安(その瞬間の不安)の度合いを評価する質問票に回答。視聴後、改めて状態不安に関する質問に答えた。
ASMR体感者は非体感者と比べて、ニューロティシズムと特性不安のレベルが大幅に高かった。これは、性格的特徴とASMR体感能力の関連を示唆している。視聴前の状態不安のスコアもASMR体感者のほうが高くその度合いは視聴後に大きく低下した。
対照的に、非体感者の状態不安は変化しなかった。ASMR動画は不安を緩和するが、効果はASMRを覚える人に限られるということだ。
だが別の視点からデータを見ると、より高度のニューロティシズム・不安傾向とASMR動画が不安に及ぼすプラスの作用は、ASMR体感の有無にかかわらず、関連していることが分かった。
こうした結果は、治療手段としてASMRを考える際には、個人的性格が重要になることを浮き彫りにする。さらに、ASMR動画の効果は、特有の刺激を感じない人でも得られることを示している。
今回の研究は比較的小規模にすぎず、被験者らがおそらく、既にASMRに肯定的だった点も無視できない。ASMRになじみが薄い人を対象とする後続研究が重要だ。
一方、脳機能イメージングに基づく最近の研究で判明したことも増えている。
脳波(EEG)を用いた研究では、マインドフルネス瞑想などのリラクゼーションと関連する脳の電気活動が、ASMR刺激に対して活発化していた。被験者が精神的に疲弊するタスクを行っている際も、結果は同じだった。
ASMRは(日常的活動の最中でも)リラックス状態と関連する脳活動の変化を導くことを、これらの研究は示している。脳機能イメージングによる研究が増えれば、ASMRの不安軽減効果の仕組みがさらに見えてくるはずだ。
Giulia Poerio, Associate lecturer, University of Essex
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.