最新記事

ウクライナ危機

五輪閉幕前に空爆、地上部隊、首都キエフへ──米政権が予測したロシアのウクライナ侵攻作戦

2022年2月14日(月)10時55分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)、ロビン・グラマー(同誌記者)
ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)

侵攻はいつ始まっても不思議でないと、サリバンは記者会見で明言した SHAWN THEW-EPA-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

<米大統領補佐官が記者会見で不吉なことを述べ、警告を発した。「欧米諸国の結束は高まっている」とも言うが、メッセージはプーチンに届くか>

北京冬季五輪の閉幕を待たずに、ロシアがウクライナへの侵攻を始める可能性がある──2月11日、ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)がホワイトハウスの記者会見で不吉なことを述べた。

ロシアは侵攻に必要な兵力を既に集結させていて、軍事作戦はいつ始まっても不思議でない、というのだ。

この記者会見でサリバンは、ロシアのプーチン大統領が侵攻を決めたという情報は現時点まだ入手していないとしつつも、在ウクライナ米国民への警告を発した。

「ウクライナにとどまっている米国民は全て48時間以内に国外に退避すべきである」と、サリバンは述べた。「軍事作戦が始まれば、空路、陸路、鉄道による脱出は期待できなくなる」

退避しなかった米国民を救出するために、米軍部隊が戦闘地帯に入ることはないと、サリバンはクギを刺した。

一方、バイデン大統領は有事に備えてウクライナの隣国ポーランドに3000人の米兵を追加派遣することを決定した。これにより、ポーランドに駐留する米軍部隊は9000人規模に膨らむ。

北京五輪が終わるのは2月20日。不吉なことに、ロシア政府当局者は、18日にドイツのミュンヘンで開幕するミュンヘン安全保障会議(欧州を中心に多くの国の首脳や閣僚が参加して毎年2月に開催される民間主催の国際会議)への不参加を示唆している。

これは、ロシア政府が外交ルートによる問題解決をもはや不可能と見なしていることの表れなのかもしれない。

昨年前半にロシアがウクライナとの国境近くに部隊を集結させ始めたとき、バイデン政権内では、ウクライナへの兵器供与を増やすべきかをめぐり激論が戦わされた。国務省と国防総省は兵器供与の拡大を主張したが、ホワイトハウスはロシア政府を刺激することを強く懸念していた。

しかし、11月以降、ロシアの部隊増強に拍車が掛かると、政権内の議論の風向きが変わり、米政府は追加の兵器供与に踏み切った。

この1年間でアメリカがウクライナに供与した兵器は、金額にして総額6億ドルを上回る。

それでも、ロシアがウクライナを侵攻する能力を持っていることに変わりはない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官、外国人学生300人超のビザ取り消し 「

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、トランプ関税警戒が継続 

ワールド

プーチン氏がウクライナ暫定統治案、選挙必要と主張=

ビジネス

加藤金融相、株主総会前の有報開示を要請 全上場企業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影された「謎の影」にSNS騒然...気になる正体は?
  • 2
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 3
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 4
    地中海は昔、海ではなかった...広大な塩原を「海」に…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    「マンモスの毛」を持つマウスを見よ!絶滅種復活は…
  • 8
    「完全に破壊した」ウクライナ軍参謀本部、戦闘機で…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 10
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 3
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 4
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 8
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中