北朝鮮ミサイル実験は「五輪明け」に再開か...これほど「連射」が必要な理由とは
Kim to Confront the U.S. This Year
現状では、北朝鮮の政府関係者が外国の代表団と会うことはできそうにない。一方でアメリカは、東欧ではロシア、東アジアでは中国相手に苦戦している。こうした状況を考えると、今年は北朝鮮にとって、アメリカに最大限の圧力をかけつつ、対話を再開する前に自分たちの要望を実現させる絶好の機会でもある。
北朝鮮は1月5日の極超音速ミサイルを皮切りに、1月だけで巡航ミサイルやSRBM(短距離弾道ミサイル)も含めて7回の発射実験を行った。なかでも1月11日の今年2回目となる極超音速ミサイルの発射実験は、昨年9月の初めての発射から改良に成功したことがうかがえる。
1月5日と11日の発射実験を受けて、アメリカは12日に経済制裁を発表。これに対し北朝鮮は、14日と17日にSRBMを発射した。
北朝鮮は、朝鮮半島の北と南の軍事活動に対するアメリカと韓国の「ダブルスタンダード」を激しく非難する。北朝鮮に言わせれば、米韓合同軍事演習は北の安全を決定的に脅かす「敵意」の証拠であり、ミサイル発射実験は「自衛」のためで他国を標的にしないと繰り返している。
小型化された核弾頭を披露するはず
北朝鮮は昨年開催した朝鮮労働党第8回党大会の公約を遂行するために、今年はさらに進化したミサイル兵器を披露する可能性が高い。その流れで新たな破壊兵器の実験も行われるだろう。
18年の米朝首脳会談で非核化協議が始まる前に北朝鮮が行った発射実験や、昨年の軍事パレードで披露したミサイルを振り返ると、固体燃料を使ったSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)である「北極星2型」の改良版や最新の「北極星5型」など、近年開発を進めてきたものを実験する可能性が高い。
金は18年に、核実験とICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を中止すると発表。核実験の全面禁止に向けた国際的な取り組みに北朝鮮も加わるとしていた。
しかし、北朝鮮の国営メディアは今年1月、この禁止措置を再検討すると報じた。今後は小型化した複数の核弾頭を披露し、強化された長距離ミサイル能力を示そうとするだろう。新しい技術が全て実を結べば、アメリカのミサイル防衛システムは、北朝鮮の新しいICBMに対して脆弱になりそうだ。
振り返れば19年には金は、核実験とICBM発射実験の中止を表明したことに縛られるつもりはないと述べる一方で、アメリカが譲歩しない限り、交渉の席に戻ることはないと繰り返していた。譲歩とは、米主導の経済制裁の解除、在韓米軍の撤退、韓米合同軍事訓練の中止を意味する。