北朝鮮ミサイル実験は「五輪明け」に再開か...これほど「連射」が必要な理由とは
Kim to Confront the U.S. This Year
現に今年1月だけで7回もミサイル発射実験を行い、昨年の中央委総会で金が述べたように引き続き軍事力を強化する意図を見せつけた。今後もミサイル技術の進歩をアピールするため発射実験を繰り返すだろう。
アメリカの譲歩を引き出すには、自前で開発した核とミサイルの威力を見せつけて最大限の圧力をかけるしかないと、金は思い込んでいるようだ。
核協議が暗礁に乗り上げ、新型コロナウイルスによる未曽有のパンデミックも収束の見通しが立たないなか、金は今年、最高指導者の威信を懸けて重要な行事に臨むことになる。2月には亡父・金正日(キム・ジョンイル)の生誕80周年、4月には建国の父で金の祖父である金日成(キム・イルソン)の生誕110周年の記念式典が盛大に催されるはずだ。
昨年末の中央委総会では、金は農村部の開発について語り、経済の再生を誓った。米主導の経済制裁に加え、過剰なまでのコロナ対策とここ数年頻発する記録的な豪雨などにたたられ、北朝鮮経済は疲弊し切っている。だが現状では経済回復の道筋が見えないばかりか、深刻な食糧不足を解消する長期的な計画も立てようがない。
中国からの援助が頼みの綱
金が食料自給率の向上を唱えても、現実には外部からの援助に頼るしかない。北朝鮮は2020年前半からコロナ対策のために外界との接触を絶っている。食糧不足を解消し経済状況を改善するには中国との国境を再開するか、さもなければアメリカとの核協議を再開して制裁を解除してもらうしかなさそうだ。
今年1月16、17日にはほぼ2年ぶりに北朝鮮の貨物列車が新義州から国境を越えて中国の丹東に向かい、生活必需品など援助物資を積んできた。中朝の国境地帯には既に消毒用の設備が設置されており、北朝鮮は中国との貿易再開に踏み切るつもりでいるようだ。
中国の援助が再開されれば、北朝鮮は核をちらつかせて大胆に最大限の圧力戦略を推進できる。アメリカに追加制裁を科されても、中国がその影響を和らげてくれるからだ。
今後さらに激化しそうな米中の覇権争いの行方をにらみつつ、北朝鮮はアメリカには強気で臨む一方で、今まで以上に中国に擦り寄るだろう。
北朝鮮が経済的な困窮の長期的な解決策を見いだすためには交渉が必要だとしても、少なくとも世界的なパンデミックが終わるまで、金は核武装の強化を続けるだろう。