公式アプリの検閲機能など序の口、「北京五輪」選手は通信も移動も「ぜんぶ丸裸」
Olympic Surveillance
中国側は全ての選手に、中国に出発する前に「MY2022」というアプリをスマホにインストールして、渡航歴を登録したり健康管理に使うことを求めている。しかしトロント大学の研究チーム「シチズン・ラボ」は、このアプリには暗号化とセキュリティーに重大な欠陥があると報告。
さらに、検閲対象となる2442のキーワードのリストが組み込まれていることも突き止めた。セキュリティーの欠陥は、当局がスマホにアクセスできるよう故意につくられたものとみられる。
選手村に到着したアスリートは、いくつもの安全対策を守るよう求められる。大々的な対策は、選手を新型コロナから守るためだという説明が仰々しく行われるだろう。選手の間に感染が広がれば、中国の面目は丸つぶれだ。選手たちは、行動範囲も会う人も厳しく制限されることになる。
中国側によれば、選手は競技会場と宿泊先でインターネットを利用できる。「グレートファイアウォール」と呼ばれる中国のネット検閲システムが解除され、国内では閲覧が禁止されているサイト(フェイスブックやツイッターをはじめとするソーシャルメディアや外国のニュースサイトなど)へのアクセスも認められるはずだ。
世界トップクラスの顔認証・AI技術
だがこのアクセスは、ほぼ確実に監視される。華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)やiFLYTEK(アイフライテック)など通信・ネットワークのサポートを提供している協賛企業は、中国公安省と緊密に連携している。この2社は共にアメリカの輸出規制リストに載っており、ファーウェイはアメリカで産業スパイの罪に問われている。
ノートパソコンを使った通信は全て監視され、ほぼリアルタイムで中国の公安当局と情報共有される。中国でネットにアクセスするには政府の認可を得たバーチャル・プライベートネットワーク(VPN)プロバイダーの使用が義務付けられており、それ以外のプロバイダーを使えば刑事訴追される恐れもある。
選手たちの行動は、スマホの追跡システム、会場のビデオ監視システムや顔認証技術を使って監視される。中国の顔認証技術やそれに関連する人工知能(AI)技術は、世界でもトップクラスだ。
五輪では、選手が競技を終えた後にどんちゃん騒ぎをすることも少なくない。選手たちの大半は、まだ若い。大きな重圧から解放されれば、息抜きもしたくなる。だがプライベートでの言動も、中国側に監視・記録されている。