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監視社会

公式アプリの検閲機能など序の口、「北京五輪」選手は通信も移動も「ぜんぶ丸裸」

Olympic Surveillance

2022年2月2日(水)17時28分
ニコラス・エフティミアデス(米スコウクロフト戦略・安全保障センター上級フェロー)
MY2022アプリ

関係者全員がインストールを義務付けられている「MY2022」 AFLO

<選手たちの言動のすべてを注視する当局の厳しいネットワーク。国内テック企業との連携と、顔認証技術で抜け道なし>

間もなく開幕する北京冬季五輪で選手たちが戦うのは、それぞれの競技の場だけではない。中国当局による監視の目も、手ごわい相手になる。

中国が徹底した監視態勢を敷く目的は、大会関係者の安全を守り、新型コロナウイルスの感染拡大を抑え、自国にとっての政治的利益を物にすること。特に最後のポイントが重要だ。中国共産党にとって最も大切なのは、自国の国際的なイメージだからだ。

なぜ中国は五輪選手を恐れる必要があるのか? 強大な力を持つ中国政府が、なぜ選手たちの言動にそれほど関心を持つのか? 中国をスパイするための訓練を受けたわけでもなく、中国の政府関係者や国家機密に近づくことさえない彼らをなぜ監視する必要があるのか? 全ては中国のイメージを守るためだ。

中国は共産党のイメージを守るために世界で最も高度で広範な検閲システムを築き、世界初の「デジタルな権威主義国」になろうとしている。市民が見聞きするあらゆる情報を制限し、中国を批判する諸外国の政府や企業、著名人を容赦なく攻撃する。

アスリートも例外ではない。中国当局は北京五輪に出場する選手がビザ申請時に提出したあらゆる情報を使って、選手に関する情報収集を行う。この調査によって、選手たちは少なくとも2つのグループに分けられる。

どちらのグループでもすべてを傍受

1つ目は、共産党が脅威と見なす問題を公に支持している者。民主主義や人権、ウイグルやチベット、香港、同性愛やトランスジェンダーなどに関連する問題だ。彼らの大会中の発言は、中国のイメージを損ないかねない脅威と見なされる。

2つ目は、中国への支持を公言している者。彼らは中国のイメージアップのために利用される可能性がある。

どちらのグループに分類されるにせよ、選手たちは北京に到着した瞬間から、スマートフォンの信号を傍受される。データの細かな情報からメッセージの内容に至るまで全てが記録され、それらは中国の公安省に渡る。

中国には国の諜報機関などが求めた場合、企業は全ての通信情報を提出しなくてはならないと定めた法律がいくつかある。また、犯罪組織が偽の携帯基地局を使って個人情報を集めて詐欺に悪用しているという報道もあり、選手が餌食にならない保証はない。

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