最新記事

変異株

ステルス・オミクロンの感染力は「1.5倍」の可能性も、知っておきたい傾向と対策

2022年2月2日(水)17時01分
セーラ・ブレイナー
コロナウイルス研究

コロナウイルスの研究を行う米ペンシルベニア大学の研究所 Hannah Beier-Reuters

<一部メディアが恐怖を煽り立てているオミクロン亜種は、従来の変異株と比べてどれだけ危険なのか? ワクチンはどれだけ有効か?>

アメリカでは、一部の地域でオミクロン株の感染拡大ペースに鈍化の兆しが見えてきた。だが最近、BA.2というオミクロンの親戚のような新しい変異株が流行し始めた。

「ステルス・オミクロン」の異名を持つBA.2は、世界数十カ国で確認され、一部メディアはその恐怖をあおり立てている。実際どの程度恐れる必要があるのか。これまでに分かっていることをQ&Aでまとめると──。

■この「ステルス」はどういう意味か

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症専門家ピーター・チンホンによれば、PCR検査で検出できないから「ステルス」と呼ばれるわけではない。その系統、つまり他の変異株やその亜種との関係を判別しにくいので「ステルス」なのだ。

BA.2はオミクロンの亜種だが、遺伝子に特定の「癖」があり(いわゆる「S遺伝子」が検出されない)、一部の遺伝子配列解析ツールを混乱させる可能性がある。つまり「新型コロナウイルス」と特定するのが難しいのではなく、BA.2と識別するのが難しい。新型コロナに感染したかどうか自体は、PCR検査で判定できるはずだ。

■どこで見つかったのか

初期の情報の多くは、デンマークからもたらされた。既にイギリス、インド、スウェーデン、シンガポールなど50カ国以上で見つかっている。最近はアメリカでも、カリフォルニア、テキサス、コネティカット、ワシントンの各州で検出が報告された。

■感染力は通常のオミクロンより強い?

まだ断定はできないが、デンマーク政府と同国立血清研究所の報告によると、感染力はオミクロンの1.5倍である可能性がある(あくまでまだ可能性の話だが)。

■より重症化しやすいか、それとも重症化しないのか

これもまだ断定できないが、デンマーク国立血清研究所の別の報告では、入院リスクに差はなかった。

■通常のオミクロンとどう違うのか

BA.2は、ウイルスが細胞に侵入する際に使用するスパイクタンパク質に別の変異が加わっている。また、前述のようにS遺伝子が検出されない。

■ワクチンや治療法はまだ有効か

「まだ有効」の定義による。BA.2は「おそらくオミクロンとそう変わらないが、正確にはまだ分からない」と、チンホンは言う。オミクロンの感染歴がある人がBA.2に再感染しても驚かないが、ブースター接種は新しい変異株にも有効なので、「入院リスクを抑えられることは確信している」という。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪肝に対する見方を変えてしまう新習慣とは
  • 3
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず出版すべき本である
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 9
    ロシア軍が従来にない大規模攻撃を実施も、「精密爆…
  • 10
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 9
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中