ステルス・オミクロンの感染力は「1.5倍」の可能性も、知っておきたい傾向と対策
コロナウイルスの研究を行う米ペンシルベニア大学の研究所 Hannah Beier-Reuters
<一部メディアが恐怖を煽り立てているオミクロン亜種は、従来の変異株と比べてどれだけ危険なのか? ワクチンはどれだけ有効か?>
アメリカでは、一部の地域でオミクロン株の感染拡大ペースに鈍化の兆しが見えてきた。だが最近、BA.2というオミクロンの親戚のような新しい変異株が流行し始めた。
「ステルス・オミクロン」の異名を持つBA.2は、世界数十カ国で確認され、一部メディアはその恐怖をあおり立てている。実際どの程度恐れる必要があるのか。これまでに分かっていることをQ&Aでまとめると──。
■この「ステルス」はどういう意味か
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症専門家ピーター・チンホンによれば、PCR検査で検出できないから「ステルス」と呼ばれるわけではない。その系統、つまり他の変異株やその亜種との関係を判別しにくいので「ステルス」なのだ。
BA.2はオミクロンの亜種だが、遺伝子に特定の「癖」があり(いわゆる「S遺伝子」が検出されない)、一部の遺伝子配列解析ツールを混乱させる可能性がある。つまり「新型コロナウイルス」と特定するのが難しいのではなく、BA.2と識別するのが難しい。新型コロナに感染したかどうか自体は、PCR検査で判定できるはずだ。
■どこで見つかったのか
初期の情報の多くは、デンマークからもたらされた。既にイギリス、インド、スウェーデン、シンガポールなど50カ国以上で見つかっている。最近はアメリカでも、カリフォルニア、テキサス、コネティカット、ワシントンの各州で検出が報告された。
■感染力は通常のオミクロンより強い?
まだ断定はできないが、デンマーク政府と同国立血清研究所の報告によると、感染力はオミクロンの1.5倍である可能性がある(あくまでまだ可能性の話だが)。
■より重症化しやすいか、それとも重症化しないのか
これもまだ断定できないが、デンマーク国立血清研究所の別の報告では、入院リスクに差はなかった。
■通常のオミクロンとどう違うのか
BA.2は、ウイルスが細胞に侵入する際に使用するスパイクタンパク質に別の変異が加わっている。また、前述のようにS遺伝子が検出されない。
■ワクチンや治療法はまだ有効か
「まだ有効」の定義による。BA.2は「おそらくオミクロンとそう変わらないが、正確にはまだ分からない」と、チンホンは言う。オミクロンの感染歴がある人がBA.2に再感染しても驚かないが、ブースター接種は新しい変異株にも有効なので、「入院リスクを抑えられることは確信している」という。