最新記事

テロ組織

指導者が一人死んでも、イスラム国の分派はこんなにある

Other ISIS Factions Still Pose Threat to U.S. After Leader Dies During Raid

2022年2月4日(金)16時06分
アレックス・ルーハンデ
米特殊部隊が攻撃したシリアの民家

米特殊部隊が攻撃したシリアの民家(2月3日) Mohamed Al-Daher/REUTERS

<ISから派生しあちこちでテロを起こしている数々組織にとって、今回の事件は何の意味もない>

ジョー・バイデン米政権は2月3日、過激派組織「イスラム国(IS)」の指導者アブイブラヒム・ハシミ・クラシの死亡を発表した。前日2日にシリアで米軍が行った急襲作戦の際に自爆したということだ。米軍にとっては勝利だが、テロ対策のある専門家は、ISの無力化にはまだほど遠いと指摘する。

クラシはISの中心派閥である「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」の指導者だった。しかし同組織のほかの複数の勢力の指導者は、中東や南アジア、アフリカ北部や中部に逃亡しており、いまだ捕まっていない。

戦略国際研究センター(CSIS)のテロ対策専門家であるセス・ジョーンズが、現在も活動中の派閥について、本誌に説明してくれた。クラシの死亡はISの終わりではなく、新たな始まりになる可能性もあると彼は言う。

「単体で考えれば、大きな問題ではない」とジョーンズは本誌に語った。「一つの出来事に過ぎず、組織として回復は可能だ」

2019年にISILの初代指導者アブ・バクル・アル・バグダディが米軍の攻撃を受けて自爆したときも、よりカリスマ性のあるクラシが後を継いだことで、ISILは逆に勢力を伸ばした、とジョーンズは言う。

指導者が死亡しても、組織の活動能力が失われるとは限らないとジョーンズは指摘する。ISILは今後も、ISの系列組織の中で、アメリカの安全保障にとって一番の脅威と見なされるべきだろうと言う。ISを滅亡させるためには、アメリカと同盟諸国は長期にわたって辛抱強くその支配地域を潰していく必要があると主張した。

ISホラサン州

ISILに次いで2番目に大きな脅威だとジョーンズが指摘したのが、IS傘下のISIS-Kという組織だ。「ISホラサン州(IS-K)」は、アフガニスタンとパキスタンで活動している。2021年8月に米軍がアフガニスタンから撤退した際、カブールの空港で米軍部隊やアフガニスタン市民を攻撃したのが、この組織だった。米国務省によれば、現指導者は2020年6月に組織を継いだサナウラ・ガファリだ。

ジョーンズは本誌に、イスラム過激派タリバンの支配下にあるアフガニスタンでも地方ではさほど強くないため、当面はIS-Kが勢力を伸ばし続けるだろうと言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ、米関税で最大80億ドルの損失も=政府高官

ビジネス

午前の東京株式市場は小幅続伸、トランプ関税警戒し不

ワールド

ウィスコンシン州判事選、リベラル派が勝利 トランプ

ワールド

プーチン大統領と中国外相が会談、王氏「中ロ関係は拡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中