指導者が一人死んでも、イスラム国の分派はこんなにある
Other ISIS Factions Still Pose Threat to U.S. After Leader Dies During Raid
米特殊部隊が攻撃したシリアの民家(2月3日) Mohamed Al-Daher/REUTERS
<ISから派生しあちこちでテロを起こしている数々組織にとって、今回の事件は何の意味もない>
ジョー・バイデン米政権は2月3日、過激派組織「イスラム国(IS)」の指導者アブイブラヒム・ハシミ・クラシの死亡を発表した。前日2日にシリアで米軍が行った急襲作戦の際に自爆したということだ。米軍にとっては勝利だが、テロ対策のある専門家は、ISの無力化にはまだほど遠いと指摘する。
クラシはISの中心派閥である「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」の指導者だった。しかし同組織のほかの複数の勢力の指導者は、中東や南アジア、アフリカ北部や中部に逃亡しており、いまだ捕まっていない。
戦略国際研究センター(CSIS)のテロ対策専門家であるセス・ジョーンズが、現在も活動中の派閥について、本誌に説明してくれた。クラシの死亡はISの終わりではなく、新たな始まりになる可能性もあると彼は言う。
「単体で考えれば、大きな問題ではない」とジョーンズは本誌に語った。「一つの出来事に過ぎず、組織として回復は可能だ」
2019年にISILの初代指導者アブ・バクル・アル・バグダディが米軍の攻撃を受けて自爆したときも、よりカリスマ性のあるクラシが後を継いだことで、ISILは逆に勢力を伸ばした、とジョーンズは言う。
指導者が死亡しても、組織の活動能力が失われるとは限らないとジョーンズは指摘する。ISILは今後も、ISの系列組織の中で、アメリカの安全保障にとって一番の脅威と見なされるべきだろうと言う。ISを滅亡させるためには、アメリカと同盟諸国は長期にわたって辛抱強くその支配地域を潰していく必要があると主張した。
ISホラサン州
ISILに次いで2番目に大きな脅威だとジョーンズが指摘したのが、IS傘下のISIS-Kという組織だ。「ISホラサン州(IS-K)」は、アフガニスタンとパキスタンで活動している。2021年8月に米軍がアフガニスタンから撤退した際、カブールの空港で米軍部隊やアフガニスタン市民を攻撃したのが、この組織だった。米国務省によれば、現指導者は2020年6月に組織を継いだサナウラ・ガファリだ。
ジョーンズは本誌に、イスラム過激派タリバンの支配下にあるアフガニスタンでも地方ではさほど強くないため、当面はIS-Kが勢力を伸ばし続けるだろうと言う。