選管担当者への恐喝、「言論の自由」が壁に トランプ派の脅迫に法改正で対応へ
コンドース氏はあるインタビューの中で、この脅迫者は州法のもとでは責任を問われないだろうと語った。すでに警察・検察は発信者の過去のメッセージを検証し、言論の自由のもとで保護されると判断していた。
コンドース氏は失望し、州議会議員6人に文書を送り、連邦法との整合性を高めるよう州法を調整し、もっと明確な訴追基準を定めるような立法措置を検討するよう促した。
連邦政府当局者は、こうした脅迫行為は深刻であり、調査に値するものと判断した。バーモント州の法執行当局者2人によれば、ロイターが10月にあった脅迫についてバーモント州当局に質問した後、連邦捜査局(FBI)がこの件の調査を始めたという。
コンドース氏は、自分が議員らに送ったメールには、脅迫行為が暴力へエスカレートしかねないと懸念する思いを込めたと語る。「私たちが今どんな世界にいるのかという認識、そして何らかの行動を取らなければという理解を示すものでもある」と同氏は言う。
脅迫か、言論の自由か
バーモントなどの州で提出された法案は、合衆国憲法がすべての米国民に保障している言論の自由の保護を変更するものではない。バーモント州の法案の賛同者はその立法意図について、州法を連邦の基準に一致させ、暴力をにおわせる脅迫を訴追することを容易にすることだと述べている。
バーモント州で起草された法案は、犯罪となる脅迫行為の定義を明確化し、訴追に向けた複数のハードルを排除するもので、特定個人を標的とする脅迫に限定する要件や、脅迫に含まれる暴力行為を実現する手段・能力を被疑者が保持していることの立証義務が緩和される。もう1つの措置は、公務員への脅迫に対して現在より重い刑罰を与えることになる。
法案作成にあたり議員への助言を行った同州のローリー・ティボー弁護士は、法案は「私たちの自由を損なうものではない」と語る。
バーモント州では、こうしたバランスはデリケートな問題だ。何しろ同州には250年近く前、つまり合衆国憲法制定より10年以上前に、広範な自由言論の保護を成文化した歴史があるからだ。
1777年、英国から独立したバーモント共和国は「言論の自由、意見を文書として公表する自由の権利」を保障する憲法を制定した。この文言は今も同州の憲法に残っている。1798年には、州選出の下院議員であるマシュー・ライオンが、ジョン・アダムズ大統領を批判したことにより「外国人・治安諸法」により収監されながらも再選された。