二階元幹事長が最高顧問を務める日中イノベーションセンターと岸田政権の経済安全保障との矛盾
小泉純一郎元首相などを除けば、ここのところ権力を握るのは「親中派」であることが多く、それは公明党と連携しているからであり、政権の背後に二階氏がいたからである。「経済界」とリンクしているため票田が関わってくる事情も挙げられよう。経営者は儲けなければ社員を養えないので、親中に傾いていく。
たとえば、センターの中国側コアになっている清華大学日本研究センターのページにある最初の一枚目の写真の真ん中の人物は当時の経団連会長の御手洗冨士夫氏だ。現在でも日本の最大貿易相手国は中国であることからも分かるように、経済界は中国なしでは生きていけないという側面を持っている。
「そのような日本に誰がした?」と言いたい。
犯人は自民党だ。
何度も書いて申し訳ないが、1989年6月4日の天安門事件後の対中経済封鎖を最初に破ったのは日本で、それによって中国共産党政権は息を吹き返し、こんにちの成長を成し遂げた。その中国に日本の経済界は頼らなければならなくなっているという悪循環を生んだのは自民党なのである。
中国で「最も親中的な西側の党」と位置付けられている公明党との連立により岸田政権は成立しており、岸田氏自身が親中ハト派の派閥の出身なのだから、「経済安全保障」などと呪文のように唱えていても、無理をしたポーズばかりが目立つ。
二階氏は自民党幹事長からは下りたが、今も国会議員なのだから、センターとの関連において釈明が求められるし、また岸田氏も首相として矛盾のない回答をしなければならない。
いっそのこと、自民党は正直に「親中」と「反中」で別れた方がいいのではないか?
権力を握ることだけが目的ではなく、「日本をどのような国に持って行くか」に関して真の理念を持っているなら、真剣に考えるべきだろう。
いつまでもダブルスタンダードを持っていると、日本という国は存在感を無くす。中国からも甘く見られて、中国の都合の良い方にコントロールされていく。
香港の民主が消滅したことからも分かるように、中国のコントロール下に置かれれば、言論の自由と個人の尊厳、特に魂の尊厳を失っていく。
日本はそれでいいのか?
今月17日に召集されることになっている通常国会では、ぜひ本稿に書いた事項も議論していただきたいと切に望む。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
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