二階元幹事長が最高顧問を務める日中イノベーションセンターと岸田政権の経済安全保障との矛盾
日本ではなぜか「アメリカに足並みを合わせて外交ボイコットをした」という刷り込みが成されているが、「日本は外交的ボイコットをしていない」ことを認識すべきだ。
その証拠に、中国は日本への警告を発しなくなった。中国共産党管轄下にある中央テレビ局CCTVは北京冬季五輪への橋本氏や山下氏の派遣を評価して、最近では沖縄における米軍基地でコロナ感染が広がっていることに対して林芳正外相が「猛烈にアメリカに抗議した」という映像を流しては、日本の「アメリカにあらがう勇気」を礼賛している。
つまり中国は「日本はアメリカに追随せず、外交ボイコットを行わなかった」と位置付けていることを表している何よりの証拠なのである。
経済安全保障政策と矛盾する自民党
岸田政権は経済安全保障に関して「やった感」を出すために、中国を念頭に、AI監視技術の輸出規制をする方針を示したようだが(参照:共同通信<AI監視技術の輸出規制へ、政府 顔認証機器やカメラ、中国に懸念>)、顔認証技術において世界のトップを走っているのは、基本的に中国のセンスタイム(商湯科技開発有限公司)だ。中国といっても香港ではあるが、香港はあくまでも「中華人民共和国特別行政区」の一つなのだから、中国=中華人民共和国の管轄下にある。したがって、日本がそのような輸出規制をしても中国のレベルの方が上なので、経済安全保障を実行していることにはならない(センスタイムが顔認証技術における世界のトップであることはアメリカ国立標準技術研究所が実施した「写真が本人かどうかの認識」や「データベースを参照して人物を特定する認識」などに関するベンチマークテストの結果で証明されている)。
岸田首相は「経済安全保障推進法」を制定すると公約し、今月17日から開かれる通常国会では当該新法案を提出することになっている。
同法の具体的内容は、その後の検討で「機微技術を巡る特許の公開制限」や「サプライチェーンの強靱化支援」あるいは「先端技術の育成・支援」など4項目を柱とすることになった。国名こそ挙げてないが、これらは明らかに「中国」を念頭に検討されたはずであり、「日本の技術が軍事転用されるリスクを回避するためだ」という暗黙の理解があるはずだ。
「サプライチェーンの強靭化」は「中国ばかりに依存しないようにしましょう」ということを指している。
しかし二階氏が最高顧問を務めるセンターは、各大学にいる(中国人)教員や企業などが「窓口」となって、「友誼」の衣を着て「経済安全保障」の壁を崩していくことにつながる。
これは文化の衣を着て全世界の教育研究機関に拠点を置く「孔子学院」の仕掛けと同じだ。
それを自民党の大物議員が、日本の大学や大手企業を巻き込んで積極的に展開しているのだから、どんなに経済安全保障の旗振りをしてみたところで、実効性は疑わしい。
自民党は「親中派議員」が権力を握る
自民党は「自由民主」であるだけに、激しい親中から激しい反中に至るまで幅が広い。
二階氏以外にも福田元首相も清華大学で大活躍だ。林芳正外務大臣は、日中友好議員連盟の会長を務めていたし(外務大臣就任とともに会長辞任)、自民党内は「親中に燃える議員」が非常に多い。