ミャンマー、間もなくクーデターから1年 民主派リーダー「2月1日、沈黙の抵抗を」
反軍政の市民も「不服従運動(CDM)」に共鳴して職場からの離脱、職務放棄で抵抗を示し、公立病院などで多数の医師や医療従事者が現場を離れた。軍政はこうしたCDMに参加した医療関係者に対して法的責任を追及する構えを見せており、今後さらに混迷が深まるものとみられている。
軍政によるデモや集会への対応はその後実弾発砲を含む強権弾圧となり、それが止むことはなく、クーデター後に組織された民主派組織「国民民主連盟(NLD)」と関係が深いとされる武装市民組織「国民防衛隊(PDF)」が組織され、各地で軍や警察など治安部隊と銃撃戦などの武装闘争を続けている。
こうした反軍政の市民による武装抵抗運動に長年軍政と対立してきた国境周辺の少数民族武装勢力も呼応。PDFの市民への軍事訓練、武器供与、共同作戦実施などで戦闘が激化している。
武装市民組織は「テロ組織」と軍政
ミン・アウン・フライン国軍司令官は1月20日に軍政を支える最高意思決定機関「国家統治評議会(SAC)」で武装市民組織であるPDFを「テロ組織」として徹底的に武力で弾圧する方針を改めて表明したと国営紙が伝えた。
これは東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国であるカンボジアのフン・セン首相が1月7、8日にミャンマーを訪問し、ミン・アウン・フライン国軍司令官と会談した席で少数民族武装勢力と停戦する方針を明らかにした一方で、武装市民勢力とは徹底抗戦する方針を再度確認したことになる。
この時の少数民族武装勢力との停戦はあくまで軍政による一方的なもので、その後もチン州のチンランド防衛隊(CDF)、カヤ州の「カレンニー国民防衛隊(KNDF)」、カレン民族同盟(KNU)、ラカイン州のアラカン軍(AA)などと軍との戦闘は続いており、停戦があくまで軍政のポーズに過ぎないことを示している。
フン・セン首相のカンボジア訪問もASEANのコンセンサスを得たものでなく、加盟国内からは厳しい批判がでており、フン・セン首相の「スタンドプレー」への警戒も強まっている。
こうした状況の中で2月1日を迎えるミャンマーで市民は「沈黙の抵抗」で軍政への反発を示そうとしている。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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