中央経済工作会議「習近平重要講話」の「三重圧力」に関する誤解と真相
公務員の収入が不平等に多すぎ、給料だけでなく賞与や不動産手当てなど様々な収入があるため、一部の地域では一般庶民の収入との格差が非常に大きくなっている。あまりに高収入なので今年の公務員試験の倍率は、分野によっては約2万倍という部署もあり、異常な状況にあるくらいだ。当然庶民の不満も噴出しているので、中国政府は今年、この格差を是正するための通知を発布したほどだ。
また上海における失業保険受給者が急増したのは、2020年8月から非上海籍の人でも上海で失業保険を受けることができるようになったことに起因する。出稼ぎ者も働いている現地で失業保険をもらえるというように、支給対象を広げたからに過ぎない。
中国経済崩壊論は日本に利するのか?
このように某氏は、何が何でも「中国経済が崩壊する」方向に強引に持って行きたいようだが、これは某氏に限ったことではない。ともかく「習近平政権が崩壊する」とか「中国経済が崩壊する」と言えば日本人が喜ぶので、本が売れて、より多くのネットユーザーが記事を読んでくれる。
たしかにそういった分析を読む方が、気がスッとするし愉快なのではあろう。その気持ちは理解できないではない。
しかしそうやって少なからぬ日本人が虚空の中国崩壊物語に酔いしれている間に、中国は確実に成長し、経済力と軍事力もアメリカに近づき、やがて凌駕しようとしているという現実が進行しているのである。
中国経済崩壊論に期待すること20年以上。明日にも崩壊する、今度こそ崩壊する
という「甘い言葉」に誘われて偽の物語に酔いしれるのは、日本という国にいかなるメリットももたらさない。それでも崩壊しない現実にぶつかると、発信者側は「今度こそは崩壊する」と、しつこく「勧誘」してくる。
その目的のために事実を歪曲するのは罪深い行為だ。どんなにいやな事実でも、不愉快な現実を直視する方が日本人を守ることにつながる。
しかしネット時代は「言論の自由」があるようでいながら「選択の自由」が優先していて、どんなに事実と乖離していても「自分好みの意見」だけを選ぶ傾向にある。そして、そこに寄り集まる。
これは日本に限らず世界中に散見される現象だ。注意を喚起したい。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
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