最新記事

オミクロン株

クリスマス決行か中止か、オミクロン株爆発で土壇場の決断を迫られる欧州各国

Global COVID Surge Before Christmas Puts Governments in Tight Spot

2021年12月21日(火)19時00分
エリン・ブレイディ
ロックダウン前日のオランダ

オミクロン株が広がるオランダでロックダウン前日に駆け込みで買い物をする人々(12月18日、ナイメヘン) Piroschka van de Wouw-REUTERS

<オミクロン株の感染拡大で新規感染者数が次々と過去最多を更新するなか、オランダはクリスマス前から年明けまでのロックダウンを決めたが、他のほとんどの政府は2年連続のクリスマス潰しには及び腰だ>

クリスマスが目前に迫るなか、世界中の国々が来るべき新型コロナウイルスの感染爆発に身構えている。

アメリカとヨーロッパ諸国では、新たな変異株「オミクロン株」による感染例や入院例が増えている。専門家によれば、クリスマスの到来で状況がさらに悪化する可能性がある。それでもジョー・バイデン米大統領をはじめとする一部の指導者は、強制措置や制限措置の導入に消極的だ。

米ハーバード大学の疫学者で、2020年にパンデミック対応についてスペイン政府に助言を行ったミゲル・ヘルナンは、「制限措置の導入時期が早いほど、施行期間は短くて済む」と指摘。各国政府がクリスマス前に強制力のある措置の導入をためらう気持ちも理解できるが、パンデミックを終息させるためには、きわめて重要だと述べた。

ドイツのノルトライン・ウェストファーレン州首相であるヘンドリック・ブストも同じ考えで、同州ではクリスマス後に、規制を強化する可能性があると警告した。

「残念だが今回の冬も、新年を祝う大規模なパーティーは無理だと思う」と彼は12月20日に記者団に語った。「オミクロン株が出回っるなか、気を緩めることは許されない」

医療現場は既に「極限状態」

既に制限措置が導入されているところもある。イギリスではボリス・ジョンソン首相が、レストランやクラブなどの公共スペースでのマスク着用を再び義務化。新型コロナワクチンの接種会場も増やし、「打ち手」を増やすために経験のあるボランティアの募集も行っている。だがこうした措置も、各地が直面しているスタッフ不足の解決にはならないと、英国看護協会のパトリシア・マーキスは強調する。

「多くの医療現場で、スタッフは既に大きなストレスとプレッシャーにさらされている。体調を崩す者も出始めており、その原因には新型コロナの感染だけでなく、精神的・物理的な極度の疲労もある」とマーキスはBBCのインタビューで語り、さらにこう続けた。「だから彼らは今、この先いったいどうなってしまうのかと考えている」

イギリスでは、オミクロン株の流行により感染者数が過去最多の水準を記録しており、政府に対して新たな制限措置を導入するよう圧力がかかっている。英国看護協会は20日、医療スタッフの間に極度の疲労を訴える者や新型コロナに感染する者が増えており、それが彼らを極限に追い詰めているという警告を発した。

この警告は、ジョンソンが直面している厳しい選択を改めて浮き彫りにした。2年連続で国民のクリスマスの計画を潰すか、それとも感染者数が大幅に増えて混乱が生じる可能性に直面するかという選択だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ政府、今年の経済成長予測をゼロに下方修正=関

ワールド

ガソリン10円引き下げ、夏場に電気・ガス代補助 石

ワールド

イスラエル、ガザ攻撃強化 封鎖でポリオ予防接種停止

ワールド

イスラエル、ベイルート南部空爆 スンニ派武装組織の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 4
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 5
    遺物「青いコーラン」から未解明の文字を発見...ペー…
  • 6
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「…
  • 7
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 8
    「アメリカ湾」の次は...中国が激怒、Googleの「西フ…
  • 9
    なぜ? ケイティ・ペリーらの宇宙旅行に「でっち上…
  • 10
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中