最新記事

オミクロン株

クリスマス決行か中止か、オミクロン株爆発で土壇場の決断を迫られる欧州各国

Global COVID Surge Before Christmas Puts Governments in Tight Spot

2021年12月21日(火)19時00分
エリン・ブレイディ

これまでの証拠からは、オミクロン株は重症化するケースが少ない(科学者たちはまだ結論を下すのは早すぎると警告しているが)可能性があるものの、ワクチンによる予防効果が低い可能性があることが示唆されている。

またオミクロン株が従来株よりも「弱い」ウイルスだったとしても、感染者数が多ければそれに応じた入院や重症例が出て医療システムのひっ迫を招く可能性はある。イギリスでは、デルタ株に代わってオミクロン株が主流になってから1週間で、感染者の数が50%増加した。

英国医師会は、さらなる制限措置を導入しなければ、クリスマスまでにイングランドの国民保健制度(NHS)の医師や看護師など5万人近くが、新型コロナに感染して現場に出られなくなる可能性があると警告している。

イギリス政府は、データが示唆するように、ワクチンの追加接種によってオミクロン株の予防効果が高まることを期待しており、18歳以上の全ての人に対して、12月末までに追加接種を行うことを目標に掲げている。サッカースタジアムやショッピングセンター、大聖堂などが臨時の接種会場として使われており、19日には90万人以上に対して追加接種が実施された。

従業員が感染して閉店の店や公共施設も

アメリカのワクチンメーカーであるモデルナは20日、研究室で行った実験で、モデルナ製ワクチンの追加接種により、オミクロン株の発症予防効果が高まるという結果が示されたと明らかにした。ファイザーも同様に、実験によって追加接種でオミクロン株を防ぐ抗体の量が大幅に増えたと明らかにしている。

しかし多くの科学者は、ワクチンの追加接種だけでは不十分で、より厳しい措置が必要だと指摘している。

ドミニク・ラーブ英副首相は、20日の閣僚会議に先立ち、今週中に新たな制限措置が発表されることもないとな言えないと述べた。英政府の閣僚たちは、年末年始の集まりを制限する強制力のないガイダンスから、ソーシャルディスタンス確保の義務化や飲食店の夜間営業禁止に至るまでの、複数の選択肢を議論している。

イギリスでは、オミクロン株の感染者数が2日おきに倍増する勢いで、それがクリスマス商戦に大打撃を与えている。

普段なら人で溢れかえる劇場やレストランは、相次ぐキャンセルに見舞われている。一部のレストランやパブは、病欠または自主隔離中のスタッフが多いために、休暇明けまで閉店を決めている。ロンドンの主要な観光名所のひとつである自然史博物館は20日、「接客を担当するスタッフの不足」を理由に1週間の休館を発表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ワーナー、パラマウントの買収案を拒否 ネトフリ合

ビジネス

独IFO業況指数、12月は予想外に低下 来年前半も

ビジネス

EU、炭素国境調整措置を強化へ 草案を正式発表

ワールド

インドネシア中銀、3会合連続金利据え置き ルピア支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中