ローマや北京はなぜ「崩壊」しなかった? 古代都市から「持続可能性」を学ぶ
Learning from Ancient Cities
現代都市の持続可能性にも関連がある一つの発見は、都市の「規模」が適応力と持続可能性に及ぼす影響だ。
ヤウテペックの集落跡はいずれも存続率が高く、存続期間の中間値は370年だった。このデータをさらに詳しく見ると、より規模が大きな集落のほうが長く存続する傾向が明らかになった。
ほかにも複数の顕著なパターンがある。この地域の最も初期の都市は、紀元前1世紀に極めて条件のいい農地に隣接してつくられていた。これらの都市は1000年以上も持続した。地の利が都市の存続と成功に寄与していたのは間違いない。
だが都市国家テオティワカンによるヤウテペックの征服(紀元150年頃)は、都市の存続には物理的な規模よりも政治的な変化の影響が大きい可能性を示している。
征服によって一帯に新たな行政区(集落)ができ、多くの都市ができた。しかし300年後にテオティワカンが撤退すると、これらの集落は放棄された。統治という目的がなくなると、大規模集落は意味を失ったようだ。
都市の「規模」は本当に重要か
果たして都市の規模とその持続可能性の間にはどのような関係があり、その関係は他の古代都市でも見られるのだろうか。もしも一般化できる関係が見つかれば、それは現代の都市づくりにも生かせるのではないか。
都市部の人口密度が高いほど持続可能性も高まるという指摘は、現にある。それが本当なら、いま各地で起きている都市の縮小傾向は憂慮すべき事態ということになる。また経済学の世界では「1人当たりGDPの伸び率は大規模都市のほうが高い」とされているが、この傾向は古代都市にも見られる。
古代史や考古学の知見を現代の科学者や都市計画立案者が使えるようにするには、まだ2つのハードルを乗り越える必要がある。第1に、私たちは手持ちのデータを、長期の持続性に焦点を当てつつ再検討しなければならない。
遠い昔の都市を持続可能にした要因は何だったのか(都市の規模かインフラか、それとも社会制度か)。そうした過去の教訓を、今日の気候変動への対応にどう生かせるのかの検証は簡単ではない。ある遺跡調査のデータを持続性の観点から再検証するだけでも膨大な作業だ。
第2に、適応力のある都市づくりを目指す研究者と私たちが連携し、長続きした古代都市に特徴的なパターンやプロセスと、現代都市を気候変動に適応しやすくする要因との間に、有意で有益なつながりを見つけなければならない。
いずれにせよ、私たち考古学者には古代都市に関する膨大な未解析データがある。それをどう使えば未来の都市づくりに生かせるのか。その解析から、困難な答えが発掘できるかもしれない。
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