習近平、「台湾統一」は2035年まで待つ
2019年10月1日、建国70周年記念の軍事パレードにおける習近平国家主席 Jason Lee-REUTERS
中国の台湾武力攻撃が近づいていると思う人が多いが、習近平は実は2035年まで動かない。それまでに福州と台北を高速鉄道でつなぐ計画を進めている。中国では≪2035年に(高速鉄道で)台湾に行こう≫という歌が大流行だ。
2035年までに「福州―台北」高速鉄道を含めた公路を完成
2021年2月、中共中央と国務院は「国家総合立体交通網計画綱要」(以下「綱要」)を発布した。「綱要」では、2021年から2035年までの国家総合立体交通網の布陣が書いてある。それによれば、2035年までに「(福建省)福州市から台北市」をつなぐ高速鉄道を含めた公路が完成することになっている。
2020年12月30日、中国政府の通信社である新華社の電子版「新華網」は、福建省で建設中の鉄道・公道併用の平潭(へいたん)海峡公鉄大橋が正式に開通したと報道した。これは中国初の公共鉄道による海を渡る橋となる。この建設工事は2013年10月30日から始まっており、上層は時速100キロの高速道路6車線、下層は時速200キロの高速鉄道で福平鉄道(福州‐平潭県)の重要プロジェクトとなっている。
平潭は台湾と中国大陸との間では、台湾に最も近い海壇島を含む島嶼から成る県で、もともと橋梁を建築する計画があった。習近平はそれを含めて「綱要」を作成し、台湾統一の足掛かりとする戦略を動かしている。
大陸と台湾を結ぶ計画は、北ルート、中ルート、南ルートなどがあるが、今般の「福州-台北」ルートは北ルートに分類される。南ルートは、長年議論されてきた「金門-厦門(アモイ)跨線橋」を含む「厦門-金門」、「金門-澎湖-嘉義」のルートを指す。
これらのルート開通によって何をするかのヒントの一つとして、南ルートの場合を説明すると、金門と福建省には「新4通」(水、天然ガス、電気、橋)という課題がある。インフラ整備は生活と交易に直接関係しており、たとえば孤立した小さな離島などは「真水」を必要としているため、金門と福建はすでに「水」ではつながっている。天然ガスに関しては金門の酒造工場蒸留所の発電に重要な役割を果たすことなどから一定の交易関係があり、両地の住民が船に乗って相手側の商品を買いに行くなど庶民レベルの交流もある。
しかし電気や橋梁の建設となると、台湾政府が承諾しなければ成立するものではない。それでも「綱要」は「台湾通道(台湾海峡回廊)」を「やれる限りのギリギリのところまで」着々と進めていくつもりだ。
今年11月24日になると、大陸側の国務院台湾弁公室の朱鳳蓮報道官は、定例記者会見で記者の質問に答える形で「綱要」の進捗状況に関して発表した。
それによれば、「台湾通道」プロジェクトに関してさらなる進展があり、平潭海峡における公道鉄道両用大橋の平潭区間は、公道鉄道ともに既に完全に開通したとのこと。また、福建省の関係部門は(台湾の)金門・馬祖との橋梁の初歩的技術計画を完成させており、「綱要」の「福州-台北間の支線建設」は既に計画段階を終えたようだ。