2021年JC・JK流行語大賞を総括する──「第4次韓流ブーム」と「推し活」という2つのキーワード
日本における「第1次韓流ブーム」は2003年のヨン様フィーバーに日本中が沸いた『冬のソナタ』がきっかけとされている。ペ・ヨンジュン、イ・ビョンホン、チャン・ドンゴン、ウォンビンといった韓流ドラマのブームを牽引した韓流四天王のことを覚えている読者も多いのではないだろうか。続く「第2次韓流ブーム」は東方神起・KARA・少女時代・BIGBANGなどのK-POPグループが台頭した頃である。昨今のBTSを始めとした日本における韓国アイドル市場の土壌が整い始めた時期ともいえる。この2つのブームを経て、元々多国籍な街であった新大久保もコリアンタウンとして観光地化し、2013年には韓国系の店舗数は628軒を超えたという5。
韓国グルメ、インスタ映え、渡韓
中でも韓国グルメはその見た目から若者から絶大な支持を得ていた。味はもちろんだが、チーズタッカルビや韓国風かき氷であるパッピンスなどは、その見た目が派手で可愛らしいことからSNS投稿を目的に消費されることも増えた。当時Instagramの国内認知度は2014年12月時点では48.6%であったが、2016年1月には72.8%に増加しており、2017年には「インスタ映え」という言葉が流行語に選ばれるなど、主に若者の間ではSNSに投稿することで消費が完結する消費行動がより一般的となってきていた。そのため、その見た目が派手で可愛らしく映える韓国グルメは、インスタ映えとの相性がよかったのである。また、LCC(格安航空会社)の普及により2016年10月当時、関西国際空港からは1日40便弱、成田空港や福岡空港からは1日20便以上の韓国行きの便があった6ことが、渡韓の流れに拍車をかけた。K-POPアイドル風のオルチャン(美少女の意味)メイクや低価格で入手できる韓国のプチプラのコスメやファッションを目的に渡韓する若者も増え、また、それらの消費がSNSに投稿されることで、SNSをきっかけに「第3次韓流ブーム」が生み出されたのである。
2017年以降になると、いったん韓流ブームは下火となり、新大久保における韓国系の店舗数は384軒まで減少した7。2019年度のJC・JK流行語大賞をみても、韓国に関するキーワードが突出して多かったわけでもない8。しかし、韓国のプチプラのコスメやファッションなどは若者からの支持を受け続け、お洒落やファッションに興味があるJC・JKにとって新大久保は美容と親和性の高い街として認知されていくこととなる。元々若者の流行は原宿発祥のモノが多かったように思われるが、何か新しいモノを求めて新大久保へと向かうという消費文化が若者の間で定着していったのである。そして2020年以降の我々は、新型コロナウイルスの感染拡大による未曾有の事態の只中にあるわけだが、ステイホーム中のエンターテインメントとして韓国コンテンツの存在感が増していくことになった。
ステイホームで火が付いた第4次ブーム
このステイホーム期間中の韓国コンテンツの人気が「第4次韓流ブーム」の始まりであった。2020年上半期のJC・JK流行語大賞9「モノ部門」をみると音楽プロデューサーJ.Y.パークによる「Nizi Project」や、牛乳の上にふわふわに泡立てたコーヒーがのった韓国で人気のドリンク「ダルゴナコーヒ―」、アジア圏を中心にNetflixのランキング上位を独占した「愛の不時着」がランクインしている。その他にも第92回アカデミー賞で作品賞など複数の賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』やBillboard Hot 100にて2週連続で1位を獲得したBTSの「Dynamite」が世界的に大ヒットした。2020年JC・JK流行語大賞(下半期)10と2021年上半期のJC・JK流行語大賞11をみると、突出して韓国に関するキーワードが多かったわけではないが、2021年下半期のJC・JK流行語大賞では韓国関連のワードの存在感が増している。
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5 金 延景(2016)「東京都新宿区大久保地区における韓国系ビジネスの機能変容 経営者のエスニック戦略に着目して」『地理学評論』, 166‒182.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/grj/89/4/89_166/_pdf
6 中川 雅博「「韓国LCC」が日本の空に殺到する理由 関空、成田、福岡は毎日「韓国行き」だらけ」東洋経済ONLINE 2016/11/11 https://toyokeizai.net/articles/-/144618
7 山田 稔「女子高生が竹下通りから新大久保に流れるワケ 原宿では歴史がある雑貨店など閉店が相次ぐ」東洋経済ONLINE 2020/11/09
https://toyokeizai.net/articles/-/386569?page=5
8 韓国人YouTuberの動画からブームに火のついた「ハンドクラップダンス」や韓国の人気サバイバルオーディション番組の日本版「PRODUCE101 JAPAN」がランクイン
9 JC・JK流行語大賞2020年上半期を発表 「◯◯しか勝たん」「ぴえんこえてぱおん」がランクイン!2020/06/30
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000017469.html
10 JC・JK流行語大賞2020を発表 「きゅんです」「ぴえんヶ丘どすこい之助」がランクイン!2020/11/30
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000017469.html
11 JC・JK流行語大賞2021上半期を発表「はにゃ?」「アセアセ」「地球グミ」がランクイン!2021/06/30
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000017469.html