女子テニス彭帥選手の告発に沈黙守る元副首相 中国共産党、口を閉ざしてきた歴史
2007─12年まで張高麗氏は天津市党委書記を務め、一時荒廃していた天津市を11年には中国で最も高成長を遂げた地域に生まれ変わらせる手腕を発揮した。13─18年は副首相として、習近平国家主席の肝いりである巨大経済圏構想の「一帯一路」を含めた経済問題のかじ取りを任されるとともに、冬季五輪の実行部門の監督役を務めた。
16年にはバッハ氏と面会し、22年の北京冬季五輪を特別かつ素晴らしい内容にすることに万全を期すための取り組みを進めているところだと説明していた。
彭帥さんは投稿で、張高麗氏と天津で初めて出会い、性的関係になったと明かしている。張高麗氏は引退後すぐに、スポーツドクターを通じて再び連絡をよこし、関係が再燃したという。
「あなたは北京(中央政府)での昇進後、私との連絡を絶った。私は全てを胸の内にしまい込みたかった。あなたは責任を取るつもりがなかったのに、なぜ、まだ私を求め、あなたの家で性行為を強要したのか」と記した。
彭帥さんは、張高麗氏の妻がこの関係を知っていたとも指摘。ほとんどの中国指導者と同様に、張高麗氏の妻は年齢も含めて詳しい情報は判明していない。夫妻には息子が1人いる。
口を閉ざしてきた歴史
複数の専門家によると、張高麗氏の沈黙は「パナマ文書」で汚職を批判されたり、不倫のうわさが出た過去の共産党指導者が取ってきた態度と全く同じだ。
習近平氏は、9年にわたる自身の指導体制における功績の1つとするべく、汚職の一掃に向けた包括的な取り組みを進め、党幹部に対して政治家として、専門家として、家族的道徳の上で「最も厳しいテストに合格できる」よう求めている。
上海政法学院の元准教授で現在はチリを拠点としているチェン・ダオイン氏は、張高麗氏からすれば口を閉ざすしか選択の余地はないと話す。「彼が(彭帥さんの告発を)否定しても、決して信用されないだろう。なぜなら習近平氏による汚職摘発の結果、現在の中国人民は誰でも、当局者が権力を武器に性的関係を迫るのは当たり前と承知しているからだ」と説明した。
中国では通常、政治的ないし経済的な不正が調査で見つかった当局者の「悪事」を一層際立たせる目的で、性的なスキャンダルが用いられる。
北京在住の著述家ウー・キアン氏は「自らを法を超越する存在とする共産党にとって、指導者以外の誰にも説明責任はないとみなしている」と指摘する。
また、先のチェン氏は「張高麗氏が彭帥さんの言い分を認めてしまうと、彭帥さんが中国でもフェミニスト運動が成功する好例となり、それは共産党の権力に挑戦する動きをもたらしかねない」とみる。
(Yew Lun Tian 記者)
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