最新記事

石油備蓄

石油国家備蓄放出でもガソリン価格が下がりそうにない理由

Biden's Use of Oil Reserves Likely Too Little, Too Late for Thanksgiving Gas Prices

2021年11月24日(水)19時10分
ジョン・ジャクソン

カリフォルニア州サンディエゴの店頭価格は7年ぶりの高値 .Mike Blake-REUTERS

<石油国家備蓄の放出という奥の手で高騰するガソリン価格を下げようとするバイデン政権だが、感謝祭の連休には間に合わず、影響は短期的に終わるとみられている>

ジョー・バイデン大統領は10月23日、ガソリン需要が高まるホリデーシーズンに先立って、ガソリン価格の上昇を抑制するために緊急用の石油備蓄を放出すると発表した。

だが専門家によれば、感謝祭(11月25日)の連休に車で帰省する人々が、給油の際にガソリン価格の下落を感じる可能性は低いかもしれない。

「感謝祭までに、ガソリン価格に今回の措置の影響が及ぶとは考えにくい」と、米自動車協会(AAA)のスポークスマン、デビン・グラッデンは本誌に語った。「価格は徐々に低下するだろうが、長期的な影響をもたらすとは思えない。何らかの影響があるのは確かだが」

中国、インド、日本、韓国、イギリスも、世界的な原油価格高騰との闘いを支援するために、それぞれの石油備蓄の放出を計画している。市場がどのように影響を受けるかは、ある程度、これらの国々がいつ、どの程度、協力するかにかかっている、とグラッデンは言う。

「それでも、原油生産を持続的に増加させる措置ではないので、影響は長続きしそうもない」

店頭価格は下がらず

燃料価格追跡サイト、ガスバディの石油分析部門責任者パトリック・デ・ハーンは本誌に、価格が下がる時期を正確に予測するのは難しいだろうと語った。

「今回の備蓄放出より先に、原油価格は下落している」と、デ・ハーンは指摘した。「バイデンが備蓄の放出を行うことは大方の予想通りだったので、先週の原油価格は1バレル当たり約8ドルか、もしかすると約7ドル下落した」

ガソリン価格は今後数日間、やや下がる可能性はある、と彼は言う。「だが現時点ではわからない」

「全米で何百万もの人々が車で外出する時期だから、給油所側は祝日の連休が終わるまで、あまり値下げをしたがらないかもしれない。単純に、少しばかり余分に儲けたいからだ」と、デ・ハーンは語る。「給油所が原油価格の変動や下落に従って価格を変更していたら、感謝祭に向けてガソリンはかなり安くなっていたはずだ。だがガソリンスタンドの経営者は少し余分に利益を得るために、感謝祭が終わるまで値下げをしないのではないかと私は疑っている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBとECB利下げは今年3回、GDP下振れ ゴー

ワールド

ルペン氏に有罪判決、被選挙権停止で次期大統領選出馬

ビジネス

中国人民銀、アウトライトリバースレポで3月に800

ビジネス

独2月小売売上は予想超えも輸入価格が大幅上昇、消費
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中