「白人で通じる黒人」の祖父を持ったレベッカ・ホールが見つけたもの
「私自身がこの映画のテーマの生きた例なのよ」
さらには、「なぜ白人のあなたが黒人の話を語るのか」という、当然の疑問があった。カメラの前でも後ろでも多様性が求められ、配慮がなされる現代のハリウッドでは、黒人の話なら黒人に語ってもらうのが正しいとされる。有色人種のフィルムメーカーの支援を主なミッションとするフォレスト・ウィテカーのプロダクション会社に持ち込んだ時も、最初は「僕らにあなたのお手伝いができるかどうかわからないが」と言われた。しかし、ホールが祖父についての話をすると、「なるほど。これはあなたが語るべきストーリーだ」と納得してくれている。
「同じことを聞かれるたびに、私は、『それは、あなたが私の外見から受ける印象ですよね』と言ったわ。私自身がこの映画のテーマの生きた例なのよ。でも、この映画を作る上で障害になったのは、それだけではない。モノクロでなくカラーでやれないか、曖昧さをもっとなくしてくれないか、などとも言われた。何より、黒人女性ふたりが主人公の映画で果たして稼げるのかという疑問を持たれたし」。
それでも、映画は見事完成。今年初めのサンダンス映画祭でお披露目されると、Netflixが1,500万ドルで世界配給権を買い付けて、話題を集めた。インディーズ映画に与えられるゴッサム・アワードでも、作品部門を含む5部門でノミネートされており、このアワードシーズン中に、ますます注目が高まっていきそうである。批評家からも高く評価されているが、ホールにとって何よりも嬉しいのは、彼女の一番大切な人が気に入ってくれたことだ。
「母もこの映画を見てくれた。そして、とても誇りに思ってくれている。この映画を見たことで、母は、自分が引き継いできたものをしっかり受け入れられたのだと思う。今、私と母は、その前だったら話さなかったようなことについて話す。おかげで、祖父についてこれまで知らなかったことを知ることができた。祖父は、すばらしい人だったのよ。その事実はこれまで消されていたの」。
グレーだった祖父の存在は、今、ホールの中で鮮やかな色を持ち始めている。