最新記事

中国スパイ

「消えた」香港人著名活動家は中国が仕掛けたハニートラップの犠牲者か

Chinese Honey Trap Rumor Fuels Hong Kong Paranoia As Activist 'Disappears'

2021年11月10日(水)19時03分
デービッド・ブレナン

ウォンはラムが語った電話でのやり取りを否定した。「ラムのことはよく知らない」と、ウォンは言う。「突然、電話をかけてきて、いくつか、とても奇妙なことを聞かれた」

「あれはロックダウンの最中か、ロックダウン解除の直後だったと思う。だから私は電話の代わりにズーム会議を提案した。なぜ彼が会って話をしたがったのか、私にはわからなかった」

「私は電子メールを送って、連絡先の詳細を伝えた。ところが、返信はなかった。このいきさつから、変な人だと思った」

ウォンは現在の居場所は明かせない、と本誌に語り、ロンドンにはいないことだけは明らかにした。

ウォンのフェイスブックは何カ月も動きのないままだったが、最近になって新しい写真が数枚投稿された。そこには新しい家族と楽しそうにポーズをとるウォンの姿が写っていた。そのうち一枚は、イギリスのプロサッカークラブ、マンチェスター・ユナイテッドの本拠地であるイギリス北部の都市の、サッカースタジアムの外で撮影されたものだった。

ウォンと数年前に知り合い、かつては一緒に働いたこともある匿名の人物は本誌に、ウォンがソーシャルメディアから離れたことに驚いたと語った。

「彼は長い間フェイスブックを更新しなかった。それはとても珍しいことだ」と、この人物は言う。「私はいろいろな人に声をかけて、ケネスがどこにいるのか知っているかと尋ねた。誰も、何の手掛かりも持っていなかった」と、この人物は言う。

「ケネスがどこにいるのかを、本気で調べようとしている人はいないと思った。それ以上踏み込んだら、危険があるかもしれないことを誰もが知っていたからだ」

家庭生活も恐喝する共産党

香港の活動家と緊密に協力してきたあるジャーナリストは匿名で、関係者は疑念を抱いていると語った。「イギリスにいる活動家の多くは、この問題を本当に心配している」と、彼は言う。

「なかには、ハニートラップだと本気で信じ込んでいる人もいる。もちろん、男女の間にはよくある問題だと考えている人もいる。それでも、しばらくの間、ケネスとは距離を置くべきだと確信している。うさんくさい話だからだ」

「彼らには、中国共産党は全力で活動家のサークルにスパイを送り込もうとしているという共通の認識がある。だから、ハニートラップの可能性を否定することができない」

「ウォンがハニートラップにはまった可能性を排除することはできない」と、ラムは言う。「中国共産党が人の家庭生活を恐喝に利用することは、目新しい話ではない。少なくとも1960年代から使われてきたやり方だ」

ネットメディアのアクシオスは2020年に、クリスティーン・ファン(別名ファン・ファン)という女性が主導した中国のハニートラップ作戦疑惑を暴いた。ファンはカリフォルニア州をはじめ全米各地で国政に影響を与えそうな新進気鋭の政治家と親交を結んだ。

ファンは少なくとも中西部の市長2人と性的関係にあった、とアクシオスは報じた。彼女のネットワークに「取り込まれたのは、国家機密に関わる立場の人間だった」と、ある米情報当局者はアクシオスに語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中