「消えた」香港人著名活動家は中国が仕掛けたハニートラップの犠牲者か
Chinese Honey Trap Rumor Fuels Hong Kong Paranoia As Activist 'Disappears'
「ハニートラップは本当によくあることだ」と、チェンは本誌に語った。「こういう事情だから、誰であれ女性が近づいてくると、私はものすごく警戒する」
ウォンはイギリスで香港出身のさまざまな活動家グループの世話役として、長年にわたって重要な役目を果たしてきた。中国共産党の工作員にとって格好の標的になりうる存在だ。
ウォンが勤務するフラゴメン法律事務所は、香港からの脱出者をはじめ移民の案件を専門とする米企業で、最近データ漏洩の被害にあった。ウォンはボランティアで警察の活動を支援するロンドン警視庁の特別巡査も務めている。
ロンドン警視庁に、ウォンが特別巡査を続けているかどうかの確認を求めたところ、回答は拒否された。ウォンに近い人々は、彼の財政状態などを心配しつつ、ウォンの家族が香港警察や他の政府機関に勤めていると語っている。
匿名のある情報筋によれば、ウォンは活動家サークルの中心となる存在だった。ウォンは「情報、政治的支援、イギリスの政治家とのコネ」で香港出身者を助け、「ここの中心人物だった」という。
「もしウォンが陥れられたとしたら、香港人の運動に危険が及ぶかもしれない」と、ラムは言う。
イギリスが工作の主戦場に
香港からの亡命者コミュニティ内に噂が渦巻くのは、集団的な不安に襲われている証拠だ。中国が超大国の地位を固め、リベラルな国際秩序を破壊しつつ権威主義を復活させるなか、香港からの脱出者が集まることによって、イギリスは中国にとって重要な戦いの場となった。
約300万人の香港人(人口のほぼ半数)がBNOの資格を持っている。「それは中国の戦略全体に影響を与えるだろう」と、チェンは言う。「イギリスでは人が突然姿を消したりはしない。だが在英中国工作員は、誰が誰とどこで会うか、何をするか、誰が反中抗議活動に参加するか、といった証拠を集めるだろう」
「そして、監視されていた香港人活動家が親中派の国に足を踏み入れると、困ったことが起きる」と、彼は中国への引き渡しの可能性に触れた。
イギリスに新たに到着した香港市民の多くは、有名な活動家に比べれば自分など「取るに足りない存在」だと考えるだろう、とチェンは言う。だがイデオロギー的な熱意に満ち、政治活動に神経質になっている中国政府のスタンスからすれば、誰でも標的になる可能性がある。「ひょっとすると突然、私のように最前線に押し出さるかもしれない」