最新記事

中国スパイ

「消えた」香港人著名活動家は中国が仕掛けたハニートラップの犠牲者か

Chinese Honey Trap Rumor Fuels Hong Kong Paranoia As Activist 'Disappears'

2021年11月10日(水)19時03分
デービッド・ブレナン

「ハニートラップは本当によくあることだ」と、チェンは本誌に語った。「こういう事情だから、誰であれ女性が近づいてくると、私はものすごく警戒する」

ウォンはイギリスで香港出身のさまざまな活動家グループの世話役として、長年にわたって重要な役目を果たしてきた。中国共産党の工作員にとって格好の標的になりうる存在だ。

ウォンが勤務するフラゴメン法律事務所は、香港からの脱出者をはじめ移民の案件を専門とする米企業で、最近データ漏洩の被害にあった。ウォンはボランティアで警察の活動を支援するロンドン警視庁の特別巡査も務めている。

ロンドン警視庁に、ウォンが特別巡査を続けているかどうかの確認を求めたところ、回答は拒否された。ウォンに近い人々は、彼の財政状態などを心配しつつ、ウォンの家族が香港警察や他の政府機関に勤めていると語っている。

匿名のある情報筋によれば、ウォンは活動家サークルの中心となる存在だった。ウォンは「情報、政治的支援、イギリスの政治家とのコネ」で香港出身者を助け、「ここの中心人物だった」という。

「もしウォンが陥れられたとしたら、香港人の運動に危険が及ぶかもしれない」と、ラムは言う。

イギリスが工作の主戦場に

香港からの亡命者コミュニティ内に噂が渦巻くのは、集団的な不安に襲われている証拠だ。中国が超大国の地位を固め、リベラルな国際秩序を破壊しつつ権威主義を復活させるなか、香港からの脱出者が集まることによって、イギリスは中国にとって重要な戦いの場となった。

約300万人の香港人(人口のほぼ半数)がBNOの資格を持っている。「それは中国の戦略全体に影響を与えるだろう」と、チェンは言う。「イギリスでは人が突然姿を消したりはしない。だが在英中国工作員は、誰が誰とどこで会うか、何をするか、誰が反中抗議活動に参加するか、といった証拠を集めるだろう」

「そして、監視されていた香港人活動家が親中派の国に足を踏み入れると、困ったことが起きる」と、彼は中国への引き渡しの可能性に触れた。

イギリスに新たに到着した香港市民の多くは、有名な活動家に比べれば自分など「取るに足りない存在」だと考えるだろう、とチェンは言う。だがイデオロギー的な熱意に満ち、政治活動に神経質になっている中国政府のスタンスからすれば、誰でも標的になる可能性がある。「ひょっとすると突然、私のように最前線に押し出さるかもしれない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

政府・日銀が目標共有、協調図り責任あるマクロ運営行

ワールド

訂正北朝鮮が短距離弾道ミサイル発射、5月以来 韓国

ビジネス

米IPO市場、政府閉鎖の最中も堅調=ナスダックCE

ビジネス

午前の日経平均は反落、AI関連弱い 政治イベント後
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 5
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中