自由・平等・博愛の国フランスで、移民をレイプ犯と呼ぶ極右が大躍進
A Trumpian Disaster?
16年アメリカ大統領選との類似
ゼムールは、「既成の枠組みに立ち向かうイメージのある新顔」を好むメディアの習性から恩恵を受けていると、コルキュフは指摘する。「彼は10年ほど前から極右運動の重要人物の1人だった」ため、選挙を経て公職に就いた経験はないが「立候補しても全くおかしくない」とする。
さらにコルキュフは、今のフランスでは「既成政治家への不信と不満が一触即発の状態にまで高まっている。ゼムールの超保守的なスタンスが国民にアピールする可能性はある」と分析する。
「左派は危機に瀕している。彼らは長いこと自分たちが知的な面で上回っていると考え、傲慢になっていた。そして今、ゼムールに勝利の可能性があることを信じたがらない。16年にトランプが勝つ前のアメリカの左派と全く同じだ」
世論調査での支持率の高さから、ゼムールのメディア露出はさらに増えると、コルキュフは予測する。それによって「彼が大統領選に出馬するという見通しに信憑性を与え、つい最近まであり得ないと思われていたことが現実になる」という「雪だるま効果」を生み出すとみている。
その効果の行き着く先は、22年4月24日に行われる決選投票でのゼムールの勝利だ。
ゼムールのライバルたちは、出馬を表明した後に彼の人気が衰えることを期待している。フランスのメディア規制当局は、ゼムールはジャーナリストではなく政治家と見なされるべきであり、CNewsでの出演時間は制限されるべきだと判断した。
しかしCNewsで磨かれたゼムールの言葉は、選挙運動中に一部の有権者を怒らせたとしても、メディアを喜ばせることは間違いない。
フランソワ・オランド前大統領の顧問だったガスパール・ガンツァーは、右派の弱点に乗じて支持を集めるゼムールの能力を認める。「マクロンはいい政治家だが、彼の政党の人々は自信過剰になっている」と、彼は言う。
「ゼムールは問題をやさしくかみ砕いて分析する。どうしたらメディアに注目してもらえるかを知り尽くしている」と、ガンツァーは付け加えた。「確かに大惨事かもしれないが、彼の勝利はあり得ないことではない」
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