自由・平等・博愛の国フランスで、移民をレイプ犯と呼ぶ極右が大躍進
A Trumpian Disaster?
支持率は現職マクロンにも肉薄
調査会社ハリス・インタラクティブの世論調査によると、ゼムールの予想得票率は17%。これは中道派の現職エマニュエル・マクロンより7㌽少ないだけだ。
しかも、極右の大物マリーヌ・ルペンを2㌽上回っている。ルペンは父ジャンマリが率いた国民戦線の名称を国民連合に改め、支持基盤の拡大に努めてきた。
「ゼムールはルペンの支持層に食い込んでいる」と、リビエールは分析する。「彼は中道右派と右派の票を獲得できるだろう。国民戦線とルペンの名に反感を抱く年配の保守派は、ゼムールのほうに好印象を持っている」
前回の大統領選では、選挙を経て公職に就いたことのないマクロンが勝利した(アメリカのトランプもそうだった)。次の大統領選でゼムールが勝てば、フランスに本格的な「アウトサイダーの時代」が訪れるのではないかと危惧する声もある。
しかしリビエールによれば、ゼムールが大統領になる道のりはまだまだ険しい。
カンター・パブリックが1976年からフィガロ紙(ゼムールは同紙の元コラムニスト)のために行っている月間調査を見ると、いま政治的に重要な役割を果たしてほしい人物は誰かという設問で、ゼムールは19%の支持しか得られず、全体で12位だった。「10月にこの程度の人気で、翌年大統領になった人物はいない」と、リビエールは言う。
彼はゼムールとトランプとの間には、大きな違いが2つあると指摘する。第1に、ゼムールはトランプと違って主要政党の候補者にはなれないこと。第2にトランプは大統領選に出馬したとき成功した実業家であり、大国アメリカの経済を運営するための信用を得ていたこと。そうした経歴がないことがゼムールには弱点になりかねないという。
それでも、ゼムールに対する中道右派の支持はさらに高まる可能性がある。9月に彼が左派政党「不服従のフランス」の創設者ジャンリュック・メランションとテレビ討論を行ったときには、視聴者が380万人を超え、関心の高さをうかがわせた。
一方、まだ出馬を表明していないマクロンは、中道右派だったニコラ・サルコジ元大統領の政権で働いていた保守派スタッフを陣営に迎え入れる意向だと報じられている。これはゼムールがルペンから極右支持票を奪い、彼が大統領選で決選投票に進むというシナリオを意識してのこと。再選を目指すマクロンにとっては脅威となる筋書きだ。
「今、フランスは不安定な状況にある。このムードの中では、トランプに知的なイメージを加えたゼムールのような候補者が有利だ」と、政治学者のフィリップ・コルキュフは言う。