中国、南シナ海で横暴続々と フィリピンのEEZ内座礁船の撤去を要求
アユンギン礁にあるフィリピン海軍の座礁船「シエラマドレ」
<経済的に頼りつつも南シナ海の領有権では中国と対立するフィリピン。この関係に変化が訪れるのか──>
中国とフィリピンの間で領有権を巡る争いが続く南シナ海で、フィリピンが拠点として実効支配し海軍兵士が駐留している南沙諸島(スプラトリー諸島)の岩礁にある座礁船を中国側が撤去するように求めていることが明らかになった。
フィリピンの排他的経済水域(EEZ)にある同拠点を巡っては11月16日に食料などの物資を座礁船に補給するフィリピンの民間船舶が中国公船により進路妨害や放水銃による放水を受けるなどの妨害を受け、フィリピン政府が抗議するとともにマニラにある中国領事館に抗議の活動家や漁民が押し寄せるなど両国関係が緊張する事態となっていた。
中国外交部の趙立堅報道官は11月24日、南沙諸島のアユンギン礁(中国名・仁愛礁)にフィリピンが海軍艦艇を座礁させてそこに兵士が常駐し続けて「実効支配」の状況を作り出していることに不快感を示し、同座礁船の撤去を求めた。
中国公船が進路妨害と放水で「威嚇」
アユンギン礁は中国が南シナ海のほぼ全域を自国の海洋権益が及ぶ海域と一方的に主張している「九段線」に基づき領有権を主張している。
これに対し、フィリピンはEEZ内の岩礁アユンギン礁の浅瀬に1999年海軍の揚陸艦だった「シエラマドレ」を意図的に座礁。兵士を常駐させることで「領有権」を国際社会に主張し続けているのだ。
アユンギン礁の座礁船に常駐するフィリピン海軍兵士に定期的に食料などを補給する船舶がフィリピン本土との間を定期的に往復している。ところが11月16日にアユンギン礁に向かっていたフィリピンの民間船舶2隻が中国海警局の公船3隻に進路を妨害され、放水を受ける事案が発生した。
民間船舶は放水により一部が損傷したためこの時はアユンギン礁への補給を断念して本土に戻ったという。
こうした中国側の「威嚇妨害」に対してフィリピン政府は外交ルートを通じて中国側に抗議するとともにドゥテルテ大統領は22日に嫌悪感と重大な懸念を表明した。
しかし中国側は「自国の管轄圏で法を執行しただけである」としてその行動を正当化。これを受けてテオドロ・ロクシン外相は「中国はこの海域で自国の法を執行する権利はなく、今回の事態は違法行為である。中国によるこうした自制心の欠如は2国間関係を脅かすものである」と述べて中国を厳しく批判した。