半身を失った「ゾンビザメ」、10匹に共食いされてなお泳ぎ続ける:動画
胴体を半分食いちぎられても泳ぎ続けるサメ sun
<深傷を負ってなお生きようとするサメの姿。海洋学者らが捉えた映像資料が話題に>
海の覇者・サメといえど、広い海洋では常に危険と隣りあわせで生きているようだ。海洋学者たちが調査を終え、1匹のサメをモザンビーク沖で海に放った。すると瞬く間に10匹ほどのサメの群れに囲まれて餌食となり、半身の大部分を失う負傷を負う事態となる。
サメがサメに襲われるというショッキングな瞬間だが、調査チームを驚かせたのはそれだけではなかった。体内が見えるほどの大怪我を負いながらも、ターゲットとなったサメは海底の方向に逃れようともがき、鮮血を海中に漂わせながらしばらくのあいだ泳ぎ続けていたのだ。
放流した調査チームのカメラがこの様子の一部を捉え、映像として残っている。英サン紙
など複数のイギリスメディアが動画を取り上げ、「ゾンビ・シャーク」として報じた。
映像によると左半身の胸ビレより後ろの大部分を食いちぎられ、内臓を収めていたとみられる胴体内部の空洞が丸見えになっている。断面からは痛々しく破れた肌の向こうに白身の筋肉がのぞき、体内から絶え間なく流れる血が海水を赤く染める。口から海面へと延びる糸は、放流時に取り外しが間に合わなかった調査用の釣り糸だろうか。
サメは深みへと逃げようとするが、なおも複数のサメがあとを追い回し、追撃の機会を狙っている。襲った側のサメは大小さまざまで、大きいものでは体重400キロと推定される妊娠中の個体もあったという。なかには、気性が荒いことで知られるオオメジロザメの姿も確認されている。調査チームによると、襲われたサメは半身を喪失しつつも一団から逃れようと奮闘し、およそ20分のあいだ海中を逃げ回ったあと力尽きたという。
共食いの瞬間捉えた貴重な資料
今回映像を撮影したのは、独クリスティアン・アルブレヒト大学キール校のスペイン人海洋学者である、マリオ・レブラト博士のチームだ。サメが共食いをすることはある程度知られているものの、これまで映像に収められることは珍しかった。
現場は南アフリカに隣接するモザンビークの、沖合100メートルほどの地点だ。博士たちチームがサメを海に放したところ、水面下1〜2メートルほどの浅い地点で襲撃は起こった。襲われたサメはカマストガリザメと呼ばれる全長2メートルに達する種で、世界の熱帯から亜熱帯に広く分布する。
博士は英ミラー紙に対し、「サメがサメを捕食するという事実はよく知られています。しかし、映像として記録するとなると非常に難しいことなのです」と語り、貴重な映像資料になるのではないかとの認識を示した。
一件はアメリカでも報じられている。米ニューヨーク・ポスト紙は『「半分食べられた」ゾンビザメ』「元の姿の半分になったサメだが、ガッツは失っていない」として取り上げた。記事は「その体の大部分を失いつつも、このカマストガリはレブラト(博士)とそのチームの目の前を20分泳ぎ続けた」とし、力強く生きようとするサメの姿を伝えている。