医学的な懸念から、政治の道具に変わった「ワクチン懐疑論」の実情
YOU CAN’T MAKE ME
今後の展開は変異株次第か
ミズーリ大学カンザスシティー校の医学部長で小児科医のメアリー・アン・ジャクソンによれば、現に圧倒的多数の親はわが子にワクチン接種を受けさせており、反ワクチン派の存在が自分の子や家族の健康にとって脅威になると気付けば、もう黙ってはいないはずだという。
「あなたがお子さんへのワクチン接種を拒み続けるなら、もう私のクリニックにお子さんを連れてこないでください。そう告げている小児科医もいる」と彼女は言う。ワクチンを接種していない子が同じ待合室にいたら、体の弱っている子たちが麻疹などに感染し、重症化する恐れがあるからだ。
権力によるワクチン接種の義務付けに反対するホランドは、自分たちの主張が共和党の立場に近いことは認めつつも、必ずしも共和党と一枚岩ではないと言う。「民主党はワクチン接種推進でほぼ足並みをそろえているが、共和党はどうか。ワクチン接種を選ぶか否かは個人の権利だという考え方が共和党の綱領にしっかりと組み込まれているとは、少なくとも私には思えない」
いずれにせよ、この全国的なワクチン論争の行方を左右するのは、政治的な主張ではなく客観的な数字だろう。新型コロナのワクチンで本当に爆発的な感染が止まるかどうか。そして接種完了者と未接種者の間で重症化率や死亡率に大きな違いがあることが証明されるかどうかだ。
CDCによる直近の調査では、ワクチン未接種の人は接種済みの人に比べて、新型コロナへの感染確率が5倍、入院を要する重症化の確率は約29倍という結果が出ている。ワクチン接種済みの人では死亡率が90%も下がるという報告もある。だが、そういう状況が続く保証はない。
「とんでもない変異株が出現すれば(ワクチンが効かなくなり)死亡率が上がるリスクはある」と言うのはコネティカット州議会でワクチン義務化を推進してきたスティーブ・メスカーズ議員だ。
「そうなれば『どうせワクチンなんて効かない』という議論が再燃しかねない。そして既存のワクチン全てが疑われるようになったら、それこそ悲劇だ」
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