最新記事

反ワクチン

医学的な懸念から、政治の道具に変わった「ワクチン懐疑論」の実情

YOU CAN’T MAKE ME

2021年10月27日(水)21時30分
スティーブ・フリース

211102P46_HWC_04.jpg

4月から全米で16歳以上の全ての人がワクチン接種の対象に DAVID PAUL MORRISーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

保護者を説得するのは困難に

「今日も、両親の反対でワクチンを打っていない赤ちゃんがいた。それから健康診断に来た14歳の子に子宮頸癌と髄膜炎のワクチン接種を勧めたら、母親に拒否された」とハイデルボーは言う。「新型コロナのワクチン接種も勧めたのだが、母親がすごく怒りだしてね。ああいうのを作っている製薬会社の製品は全て捨てたと言っていた」

何年も前からワクチン接種の義務付けに反対してきた人たちは、こういう話に「わが意を得たり」と思っている。「この問題を真剣に考える人が増えた」と言うのは、ワクチンだけでなくマスクの義務化にも異議を申し立ててきた非営利団体「チルドレンズ・ヘルス・ディフェンス」のメアリー・ホランドだ。

「それって安全なの? 本当に効くの? ちゃんと臨床試験をやっているの? 万が一の場合の補償は? 具合が悪くなったり、死んでしまった人がいるのはなぜ? そんな疑問を投げ掛ける人が、以前よりずっと増えた」とホランドは言う。「みんなが関心を持ち、学ぼうとしているのはいいことだ」

こうなると、ワクチン接種に非協力的な親を説得するのは難しい。ハイデルボーによると、そうした親には一定の政治的価値観があり、保守的な政治家の話やSNSで得た一部の情報と食い違う医療情報には拒否反応を示すからだ。

もう1つ、ワクチン支持派には悩ましいデータがある。昨年は定期的なワクチン接種を受けられない児童が多かったのに、そうした感染症にかかる子が増えた形跡はないのだ。

去る6月、CDCは暫定的な数字としつつも、昨年は2~8歳児の三種(麻疹、風疹、おたふく風邪)混合ワクチン接種率が前年比63%も減った地域があると発表した。しかし、だからといって患者・感染者が増えたというデータはない。

なぜか。専門家によれば、ロックダウンの続いた地域では児童の外出も制限され、保育園や学校などで感染するリスクが減ったからだ。多くの児童がマスク着用や手洗いのルールを守り、病原体との接触を避けたことの結果でもある。

しかし、ワクチン反対派は違う解釈をする。前出のホランドらに言わせれば、ワクチンなしでも患者が激増しないのは、そもそもワクチンなど必要ないことの証しだ。

実に厄介な状況だが、それでも公衆衛生の専門家が「最後のとりで」と期待するのは保護者の役割だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ロシア原油への制裁緩和を検討 世界原油高に対応

ワールド

トランプ氏、イランとの戦争「ほぼ完了」 想定より早

ワールド

イラン高濃縮ウラン、イスファハン核施設でなお保管=

ビジネス

トランプ米大統領、買収争奪戦中にネトフリとワーナー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ルートとは?...スクワットの真実
  • 4
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 5
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 6
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 7
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 10
    プーチンに迫る9月総選挙の暗雲
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中